2017年(平成29年) 9月9日(土)付紙面より
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酒田市浜中の県庄内総合支庁農業技術普及課産地研究室で試験栽培されているかんきつ類の一種「スダチ」がたわわに実り、収穫の時を待っている。地球温暖化に伴う適応性調査のため2011年シーズンから、カボスやユズ、温州ミカンなど他のかんきつ類とともに栽培しているもの。同研究室で9月中旬ごろから収穫作業を始め、地元の飲食店や旅館などに提供、品質を評価してもらう。
東北地方では100年後の年平均気温が2―3度上昇すると予測され、庄内地域の一部が温州ミカンの栽培に適する年平均気温が15―18度になる可能性があるという。県は長期的な視点に立って10年に「地球温暖化に対応した農林水産研究開発ビジョン」を策定。これを受け、同研究室は温暖地型作物の栽培適応性調査の一環でかんきつ類試験栽培をスタートさせた。
これまでの調査結果からスダチの適応性が高いとみられ、同支庁とJA全農山形、各市町などによる「庄内地域スダチ生産拡大プロジェクト」で、14年から16年にかけて栽培実証や販路確保に取り組んだ。
同研究室開発研究専門員の安孫子裕樹さんによると、植え付けから7年を経た昨シーズンは、6本ある樹木から1本当たり約1400個計8500個ほどを収穫。一部を地元の飲食店、宿泊施設に提供したところ、店主らからは「地元産だけに鮮度が高い」「温暖地域のものと変わらない」と好評だった。このほかに「『地元産スダチ』を話題にお客さんとの会話が弾んだという店主もいた」(安孫子さん)という。
今シーズンは、昨シーズンに比べて着果数が若干少ないものの、肥大は順調で2L(直径36―39ミリ)が主流。温暖地域と遜色ない高品質のスダチができたという。
同研究室では、同市浜中よりも比較的温暖な同市飛島でも試験栽培を展開している。安孫子さんは「8月は岩ガキ、秋はサンマなど、冬はマダラ(寒ダラ)といった庄内浜の旬の味覚とセットで楽しめるようにしたい。試験栽培を繰り返すとともに、地元産スダチを広くPRしていきたい」と話し今後、貯蔵方法に関する調査・研究なども進めていく方針。
2017年(平成29年) 9月9日(土)付紙面より
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庄内へのインバウンド拡大に向けて欧米をターゲットにした日本遺産体験ツーリズムプロモーション事業として、欧米の旅行会社の関係者を招いた招聘(しょうへい)ツアーが10日まで3泊4日の日程で、鶴岡市内の出羽三山地域で行われている。イギリスやフランス、アメリカの旅行会社5社の関係者5人が来庄し、座禅体験や月山散策などで出羽三山地域の魅力に触れている。
庄内へのインバウンド旅行商品の造成、催行を目的に県庄内総合支庁が東北観光復興対策交付金を活用して3本立てで企画。庄内―羽田ゲートウエイ活用商品造成を目的にした台湾からの旅行エージェントを招いた第1弾(9月5―9日)に続き、今回が第2弾。アメリカからの羽田乗り継ぎ便利用商品造成のための招聘ツアーは11日(月)―15日(金)の日程で行う。
今回は、英、仏、伊、米の4カ国から計5人の女性担当者が参加。7日朝に庄内に到着し、鶴岡市の東京第一ホテル鶴岡で歓迎式。小野真哉県庄内総合支庁長が「庄内のファンになってぜひ多くのお客さまを呼んでほしい」とあいさつ。山伏衣装の市松柄のシルクスカーフや鶴岡市から民芸品「御殿まり」などがプレゼントされた。
その後、同市羽黒地域の玉川寺(齋藤広海住職)に移動し、座禅を体験。齋藤住職が座禅について「無とは何も考えないことではなく、下心や欲など余計なことを考えないこと。とらわれないことは自由自在である」と話し、座り方などを説明した後、5人が庭園を望む赤い緋毛氈(ひもうせん)の敷かれた縁側で15分の座禅を体験。近くにカエルの声、遠くにせみ時雨が響く中、かすかに目を閉じじっと座り続けた。
イギリスでアジアの旅行商品を提供している「インサイドアジアツアーズ」ジャパン・プロダクト・エグゼクティブのマデリン・ブロミッジさん(29)は「今は高野山の宿坊のツアーを提供しているが外国人が多く、落ち着けない。庄内は景色がきれいでぜひ薦めたい。2、3度日本へ来たことのある外国人は東京よりもより日本的な文化や歴史に触れたいと思っている。FIT(個人手配の海外旅行)の旅行造成なら来年には提供できるのでは」と話していた。
一行はこの後、白装束に着替えて羽黒山登山などを体験。8日は月山8合目の弥陀ケ原散策や湯殿山方面、9日は松ケ岡開墾場の見学や夜はあつみ温泉で行われる「せせらぎの能」を見学。10日に庄内空港から帰途に就く予定。