2024年(令和6年) 3月3日(日)付紙面より
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鶴岡市の鶴岡南高校(遠田達浩校長)と鶴岡北高校(難波理校長)で1日、卒業証書授与式が行われた。両校は4月に開校する県立中高一貫校「致道館中学・高校」に統合されることから現校名での卒業式は今回が最後。“最後の卒業生”たちが学びやに別れを告げるとともに、後輩たちへ「たった一度しかない高校生活を楽しみながら、致道館高校の生徒として新たな歴史を紡いでほしい」と呼び掛けた。
「3年間の経験人生の力に」 鶴岡南高
鶴岡南高校は、1888(明治21)年7月、荘内私立中学校を旧西田川郡中学に設置。1901年に県立荘内中学校となり、20年に県立鶴岡中学校と改称した。その後、鶴岡第一高校、鶴岡高校と2回の改称を経て、52年に現在の校名となった。現校舎は85(昭和60)年完成。これまでの卒業生は約3万人余。
この日の卒業式には最後の卒業生196人と学校関係者、保護者ら計約600人が出席。関係者が見守る中、制服に身を包んだ卒業生が入場した。
校歌斉唱に続き、代表生徒に卒業証書を手渡した後、遠田校長が「これからの時代は地球温暖化や少子高齢化など多くの課題があるが、いつも次の時代を生きようとする強い意志が切り開いてきた。本校で培った力を生かし、トップリーダーとして活躍してほしい」と式辞。
在校生を代表し現生徒会長の齋藤遼平さん(2年)が「私たちはどんなときでも全力でぶつかっていく先輩たちを追いかけてきた。先輩たちは鶴岡南高校最後の卒業生という特別な存在。この学校の思い出は生涯において皆さんを支えてくれる」と送辞。卒業生を代表し前生徒会長の渡部奏仁さんが「私たちの3年間には多くのイレギュラーがあったが、この経験はこれからの人生の問題を乗り越える力となってくれる。後輩の皆さんは致道館高校の歴史の始まりをつくる大切な存在。頑張ってほしい」と答辞を述べた。
卒業生たちは教職員や保護者の拍手に送られながら思い出あふれる学びやを後にした。
「誇り持ちそれぞれの夢へ」 鶴岡北高
鶴岡北高の卒業証書授与式は同校体育館で行われ、生徒と教員、保護者、来賓など合わせて600人余りが出席した。在校生や保護者が見守る中で卒業生114人が入場。女子はこれが見納めとなるセーラー服姿、男子は学生服姿で、晴れやかな表情を浮かべて着席した。
始礼の後、「光あり 古城のほとり…」と伝統の校歌を高らかに合唱した。難波校長が卒業生一人一人に卒業証書を手渡した後、「皆さんは伝統ある鶴岡北高校の最後の卒業生。校歌も最後の合唱にふさわしく歌い上げてくれた。今後出会う多種多様な人や事柄に、しなやかに対応し日本、世界を開く人になってほしい。そのためには健康が第一。たくましく新しい道を切り開いてください」と式辞を述べた。
如松同窓会の堀朋会長など来賓あいさつに続き、在校生を代表して生徒会長の亀井春花さん(2年)が送辞で「先輩たちと一緒に行事をつくることが何より楽しかった。致道館高校の生徒として新たな一歩を踏み出すことに不安がないとは言えないが、鶴北らしさを失わず、より良い学校にすることを約束する」と述べた。これを受けて卒業生代表の佐藤夏音さんは答辞で「コロナ禍の規制で、入学前の予想と全く違う高校生活だったが、胸を張って『楽しい3年間だった』と言える。思い出の詰まったこの学校が閉校するのは悲しいが、歴史ある北高最後の卒業生として誇りを持ち、それぞれの夢に進む」と決意を述べた。
2024年(令和6年) 3月3日(日)付紙面より
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東日本大震災の発生から今月11日で13年。修学旅行で昨秋、被災した宮城県南三陸町を訪問し、震災が残した爪跡を目の当たりにした酒田市の松原小学校(後藤司校長)の6年生67人が、「震災を風化させない」という強い気持ちでオリジナル劇「サボテンの花―東日本大震災を乗り越える」を創作した。29日に同校体育館で上演し、学区住民らが鑑賞。震災発生後に生まれた世代が受け継いだその記憶、そして「生きることの意味」をあらためて問う内容に終演後、拍手が鳴りやまず、児童たちはカーテンコールで応えた。
6年生は昨年10月5日から1泊2日の日程で南三陸町を訪問し、町防災対策庁舎など震災遺構を見学したほか、宿泊先となった南三陸ホテル観洋の従業員で町議、震災語り部を務める伊藤俊さん(48)から当時の話を聞いた。伊藤さんはこの際、児童たちに「酒田に帰ったら、多くの人に感じたことを伝えてほしい」と語り掛け。その思いに応え、6年生は同11月中旬の地域文化祭での上演に向け、震災を題材にした劇の創作に取り掛かった。
脚本を担当したのは齋藤ゆうびさん(12)。国語の授業で学んだ、故やなせたかしさん作の物語「サボテンの花」を基に、目の当たりにした惨状、伊藤さんの話、多くの人の心に響いた「語り合おう」「花は咲く」といった楽曲を組み合わせて約30分の劇に仕上げた。
主人公は町防災対策庁舎前に立っているという想定のサボテン。卒業を間近に控え、「平穏で当たり前の日常がいつまでも続く」と思っていた6年生の生活が「2011年3月11日14時46分18秒」を境に一変、津波が全てをのみ込んだ。片隅に残されたサボテンは、「忘れたいことを思い出してしまう。なくなればいい」とさえ言われたものの、「ここで花を咲かせて伝えていくことが僕の生きる意味」と決意する―というストーリー。
地域文化祭での上演は成功し、「より多くの人から鑑賞してもらいたい」と今回、さらに磨きをかけて「卒業記念公演」と銘打ち再上演した。
この日は伊藤さんも鑑賞に訪れた。黒い服装に身を包んで「津波」に扮(ふん)した児童たちがステージ狭しと暴れたり、楽曲では全員で声をそろえるなど熱演。終演後、会場に詰め掛けた観客からは大きな拍手が湧き起こった。
目頭を熱くした伊藤さんは「約束を守ってくれてありがとう。感謝の気持ちでいっぱい。つらい記憶だが、伝えていかなくてはいけない。再び会う日まで私は南三陸で頑張る。皆さんも中学校で頑張って」と。脚本担当の齋藤さんは「命の尊さを考えながら創作した。日常の大切さ、生きることの意味を考えるきっかけになった」と話した。
会場では、今年元日に発生した能登半島地震の被災者支援に向けた募金も行われ、多くの人が協力していた。