2023年(令和5年) 12月6日(水)付紙面より
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国際理解講座「フレンドシップサロン」が2日、鶴岡市の出羽庄内国際村で開かれた。大戦後のシベリア抑留を経験した水口藤一さん(99)=鶴岡市=の講話を通じ、平和への思いを共有した。
水口さんは西郷村(現・鶴岡市)出身。20歳頃に通信兵として陸軍に入隊、赴任先の満州で敗戦を知らせる玉音放送を聞いた。終戦後すぐの帰国を許されず、中央アジアや極東ロシアで計4年間の抑留生活を強いられた。講話で水口さんは、当時の過酷な労働環境について「極寒の中わずかな食料しか与えられず、道端に生えている草で命をつないだ。マラリアに感染し、もう生きて帰れないなと覚悟したこともあった」と回想。現地を再訪し、日本人墓地で手を合わせた時のことも振り返り、「多くの人が家族との再会かなわず亡くなっていった。何でもない日常を送れるというのはとても尊いこと」と熱く語った。
この日は市内外から約50人が参加。平和の尊さと戦争のない世界への願いを今一度強めた。
フレンドシップサロンは、海外で活躍する人などをゲストに招いた交流会。異文化理解を深めようと、出羽庄内国際村が年に数回定期的に開いている。
2023年(令和5年) 12月6日(水)付紙面より
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30代で若年性認知症と診断された男性の実話をもとにした映画『オレンジ・ランプ』を上映中の鶴岡まちなかキネマで3日、監督の三原光尋さんのトークショーが行われ、監督が製作の思いや現場でのエピソードなどを語った。
映画は、カーディーラーのトップ営業マンだった主人公が、顧客の名前を忘れるなどの異変があり、医師から「若年性アルツハイマー型認知症」と診断され、驚き、戸惑う。心配する妻と出掛けた集会で意識が変わり、前に進んでいく、優しさに満ちた希望と再生の物語。タイトルは、認知症のシンボルカラーのオレンジと、世界を明るくともすランプを組み合わせ、認知症になっても暮らしやすい社会づくりの象徴となる願いが込められている。
トークショーは作品の上映後に行われ、冒頭、映画のモデルになった宮城県在住の丹野智文さんがビデオメッセージで登場。「認知症になると施設に入るとか亡くなるイメージがあるが、私は発症して10年たっても元気なので、心配しないでほしい。エンドロールで何人もの認知症当事者の顔が映し出されるが、10年前は公表することは考えられなかった」と語った。
三原監督は「製作時期がコロナの時期だったため、いつ撮影がストップしてしまうか心配だった。当事者へ“やってあげる”というのではなく、困ったときに助けてあげる気持ちを発信したかった。作品は家族のラブストーリー。認知症に関わっている人、関心がある人に観てもらい、この映画が力になってほしい」と話した。
さらに以前、鶴岡市立荘内病院に勤務し、現在は静岡県の病院で認知症看護認定看護師として働く富樫千代美さんが「医療従事者としての認知症告知は分かるが、この映画を見て、告知された家族の気持ちも理解したいと思った」、つるおかおれんじサポートの会副代表の五十嵐利恵さんが「おまえはおまえのままでいい、という仲間の励ましが印象に残った」と感想を語っていた。
三原監督が手掛けたもう一つの映画『高野豆腐店の春』とともに、映画は15日(金)まで、まちキネで上映している。