2023年(令和5年) 2月21日(火)付紙面より
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代表作「祝婚歌」や現代詩の最高傑作の一つとも評される「I was born」などの叙情詩で知られる酒田市出身の詩人・吉野弘さん(1926―2014年)の作品を読み上げる朗読会が18日、同市の土門拳記念館で開かれた。
吉野さんは、酒田商業高校(現酒田光陵高校)卒業後、石油会社に勤務。1953年、同人雑誌「櫂(かい)」に参加し詩作を始めた。72年に「感傷旅行」で第23回読売文学賞詩歌俳句賞、90年に「自然渋滞」で第5回詩歌文学館賞、96年には市特別功労賞をそれぞれ受賞。肺炎のため2014年1月15日に死去した。
「二人が睦まじくいるためには愚かでいるほうがいい」で始まる「祝婚歌」はめい夫婦に贈ったプライベート作品だが、現在では結婚披露宴のスピーチで広く引用されており、平易な言葉を使いながら人の温かさを表現する作品の数々にファンが多い。
同記念館は2016年からこの時期、「土門拳さんの記念館で吉野弘さんの詩をよむ」と称して酒田詩の朗読会を主宰する阿蘇孝子さん(同市)による朗読会を開催してきたが、20年以降はコロナ禍のために中止。4年ぶりとなった今年は、阿蘇さん、新庄最上地域で演劇活動を繰り広げている高橋美代さん(真室川町)が、佐々木正さん(遊佐町)のギターとパーカッション、佐藤晶子さん(同市、月刊スプーン元編集長)のトークに合わせて朗読を披露した。
佐藤さんの祖父・佐藤公太郎さんが手掛けたみちのく豆本シリーズのうち、土門拳さんが著した「ぼくと酒田」から、山王祭(酒田まつり)についてつづった一節で幕開け。ギターとパーカッションの音色に合わせ、阿蘇さん、高橋さんが「祝婚歌」「早春のバスの中で」「奈々子に」など次々と披露した。
会場となった企画展示室2では現在、昭和を代表するドキュメンタリー写真集「筑豊のこどもたち」を紹介中。参加した約20人は酒田が生んだ偉大な芸術家の作品を思う存分に堪能していた。
2023年(令和5年) 2月21日(火)付紙面より
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昨年5月にブラジルで開催された聴覚障害者による国際スポーツ大会「第24回夏季デフリンピック競技大会」の水泳競技に出場、女子100メートルバタフライで金メダルに輝いた酒田市出身の齋藤京香選手(22)=酒田光陵高卒、山梨学院大スポーツ科学部4年=を招いた講演会が18日夕、同市のル・ポットフーで開かれ、2025年に都内で開催されることが決まった第25回デフリンピックはじめ各種大会に向けてさらなる健闘を誓った。
両耳が中度難聴の齋藤選手は、旧酒田聾学校(現在の酒田特別支援学校聴覚障がい教育部)に入学。小学1年から市内の水泳教室に通い、同校中学部3年の2015年、米国で開かれた世界ろう者水泳選手権400メートル自由形で4位に入って頭角を現した。光陵高に進学した後も力を付けて高校2年の17年、トルコで開かれた前回デフリンピックでは400メートル自由形で4位入賞。卒業後はスポーツが盛んな山梨学院大に進んだ。
齋藤選手は昨年5月3日(日本時間・同4日)のデフリンピック100メートルバタフライ決勝で自己ベストを0・10秒更新する1分06秒98を記録し、金メダルを獲得。この活躍で「酒田」の名を世界的に高めたとして市が制定する本年度「酒田ふるさと栄誉賞」を受賞した。
齋藤選手は今回、市スポーツ推進委員会(堀俊一会長)の研究協議会に合わせ、チアーズ(同市)の加藤明子社長との対談形式で水泳との出合い、酒田特支・光陵高時代、デフリンピックはじめ各種大会での活躍など年代を追って講話した。
幼少期から体を動かすことが好きで、水泳以外にも体操、サッカーもやっていたという齋藤選手。デフリンピックでの活躍について問われ、「緊張したが、それ以上に楽しかった。タイムを電光掲示板で確認した時、夢かと思った」と。自らのこだわりについて「聴こえないことは個性と考え、好きなことをやる、常にチャレンジするようにしている。夢を夢で終わらせたくない」と話した。
大学卒業後は、都内の企業とアスリート契約を結び酒田を練習拠点に今夏の世界ろう者水泳選手権(アルゼンチン)、そして第25回デフリンピックの出場を目指す齋藤選手は「これまで支えてくれた人たちに恩返しするため一層、精進していきたい」と誓った。