2023年(令和5年) 3月22日(水)付紙面より
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酒田市の年度末人事異動が20日、内示された。医療職と消防職員を除く異動者は372人で、前年よりも52人多い。幹部では部長級が5人(昇任4人)、課長級が19人(同11人)がそれぞれ異動。係長級以上の女性職員は本年度より8人減の152人で、割合は前年の35・4%から微減。発令は4月1日付。
新年度から市総合計画後期計画がスタートすることを踏まえ、引き続き総合計画で掲げている目指すまちの姿「賑(にぎ)わいも暮らしやすさも共に創る公益のまち酒田」の実現に向けて6項目の重点政策を着実に実行するとともに、アフターコロナ時代における地域経済の再生、市民サービスの維持と向上を図るため、職員の実績や意欲、能力などを十分に考慮した適材適所による配置、各職階に応じた女性職員の登用、若手職員がさまざまな部署を経験するジョブローテーション、コロナ禍による影響を考慮しての業務の継続性などに留意したという。また、民間企業の「成果を挙げるためのマネジメント」を学ぶため前年同様、荘内銀行、プレステージ・インターナショナルとの人事交流(各1人)を実施する。
主な機構改革は、教育委員会社会教育文化課で所管していた「文化芸術・文化財に関する事務」を市長部局に移管、企画部に新たに文化政策課を設置するとともに、「文化政策調整監」のポストを新設、文化財資源と他の資源の連携をより推進して地域の新たな魅力の創造を図る。国指定史跡・山居倉庫の整備に関する事項は、都市デザイン課都市デザイン係が周辺整備と一体的に進める。
子育て支援体制の強化に向け、子育て支援課をこども未来課と保育こども園課に分課し、こども未来課には「子ども家庭支援センター」を設置した。
また、上下水道事業の広域化に向けて酒田、鶴岡、庄内の3市町で「庄内広域水道企業団設立準備室」を設置、酒田市からも職員2人を派遣する。
部長級の異動では、新たに設置した企画部文化政策調整監に金野洋和総務部市長公室長が就任。市民部長に村上祐美健康福祉部福祉企画課長、健康福祉部長に高橋紀幸総務部財政課長、議会事務局長に長尾和浩市民部まちづくり推進課長がそれぞれ就く。松田俊一健康福祉部地域医療調整監はこれまでの同部健康課新型コロナウイルスワクチン接種対策主幹・室長に加え、新たに市立酒田看護専門学校事務長も兼ねる。
2023年(令和5年) 3月22日(水)付紙面より
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酒田市内の旧家に、江戸時代後期の作とみられる伝統のつるし飾り「傘福」が伝わってきたことが分かった。酒田をはじめ庄内地域の傘福については寺社に奉納したものが多く、「ひな飾り用は現代人の創作」と解釈する人もいるが、古美術研究家で庄内傘福研究会長の工藤幸治さん(83)=同市若浜町=は「いわゆる『祭礼系』の傘福。最高級の素材が使用され、史料としての価値が高い。市内で見つかった傘福としてはベストワン」と話している。
傘福が新たに見つかったのは、江戸後期から明治中期にかけ北前船舟運で主に米と桐油(とよ)を扱った同市船場町一丁目の家坂家。「酒田湊旧廻船問屋『家坂亭』」として現在、広く一般開放しており、「酒田雛(ひな)街道」開催を前に先月、ひな人形を展示しようとした際、亭主を務める小松尚さん(70)らが箱に入った状態の傘福4基を見つけたという。
小松さんからの連絡を受け17日に家坂亭を訪問した工藤さんによると、酒田に伝わる傘福は、観音・地蔵信仰に基づき、子宝や子供の成長、病気治癒などを願って寺社に奉納した「祈願系」、祭りの山車やひな祭りに飾った「祭礼系」の2系統に分かれるという。今回発見された傘福は、本間家が1765(明和2)年に作らせた山車「亀笠鉾」に代表される「祭礼系」という。
見つかった傘福はそれぞれ対になっており、大きさは高さ約40センチ、直径約25センチのものと、台座を含め高さ約70センチ、直径約25センチの2種。紅花染めとみられる横幕で覆われており、「打出の小槌」「トンボ」「鼓」「宝袋」「くくり猿」といった布細工は、ちりめんや金襴緞子(きんらんどんす)など最高級の生地を使用しているのが特長。同研究会によると、トンボの布細工は珍しいという。
服飾研究家でもある工藤さんによると、使用している切れ地などから江戸時代後期の作とみられるという。工藤さんは「外に出していなかったことから紅色が残っている。高い身分にあった人が京の職人に製作を依頼し、北前船で運ばれてきたのではないか。この傘福自体が総合芸術になっている」と話した。
家坂亭では、この傘福を酒田まつりが終了する5月21日(日)まで展示する予定。入場は一般200円。