2023年(令和5年) 5月12日(金)付紙面より
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東北地方で観光に携わる関係者らで組織する「みちのくインバウンド推進協議会」(熊谷芳則理事長)の本年度総会が10日、酒田市のホテルリッチ&ガーデン酒田で開かれた。席上、新型コロナウイルス感染拡大に伴う需要減退で経営破綻したものの、国営企業として復調しつつあるタイ国際航空(タイ・バンコク)のコラコット・チャタシンガ副社長がオンラインで講演、休止中の仙台―バンコク定期便の再開について言及し、「日本の地方空港では仙台が一番。再開には旅行客とともに、貨物の増加も必要。今すぐ動いてほしい」と呼び掛けた。
協議会は、東北地方へのインバウンド増に向け、広域観光ルート開発などを進めようと、熊谷理事長(ホテルリッチ酒田社長)らが2015年に設立。北海道枝幸町のホテル総支配人としてタイ人観光客を急増させた河野裕喜さんをシニアアドバイザーに迎え、タイを中核とした東南アジアからのインバウンドに注力している。
協議会の働き掛けなどもあり、タイ国際航空は2019年10月29日からバンコク―仙台便を週3便、300人乗り機材で就航。就航から12月31日までの約2カ月間の搭乗率はバンコク発が86%、仙台発が81%と高水準で推移。多くの予約を受注していたもののコロナ禍以降、全てキャンセルとなり定期便自体も運休状態となっている。同社は現在、事業改革を進めながら運航を継続している。
この日は正・賛助会員ら約50人が出席。協議会の活動をバックアップしているタイの旅行会社「ワールドプロトラベル」のルンナパ・カンパヤ社長と共に、同国からリモートで講演したコラコット副社長は事業改革の進展に関して「保有機材はコロナ禍前の7割程度でまだ余裕がない。調達が順調に進めば、24年末―25年には元に戻るはず」と述べた。
また、仙台定期便の再開について、郡和子仙台市長ら関係者が同社を訪問したことに触れた上で「タイ人にとって東北地方は人気があり、定期便がなくなってもプロモーションを続けている。仙台側の受け入れ態勢などを協議している」と話し、「東北からタイへのアウトバウンドがどのくらい期待できるか計画を知りたい。再開に向け、まずはチャーター便を就航させる方法が最も可能性が高いと思う。秋―冬のツアー造成を急いでほしい」と述べた。
一方、総会では本年度事業計画など計3議案を承認。本年度は▽秋田支部設立と他県支部化の活動▽タイ国際航空定期便の再開に向けた活動▽着地型商品の造成支援▽タイ国ホールセラー・旅行会社への営業活動―の4項目を実施する。
熊谷理事長は「協議会の活動目的はインバウンド増とともに、この地域にお金が落ちる仕組みを構築することにある。仙台―バンコク定期便の再開は目的ではなく、手段と考える。そのためにもこの地域を魅力あるものにしていこう」と呼び掛けた。