2023年(令和5年) 9月29日(金)付紙面より
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酒田市こがね町二丁目に昨秋開所した就労継続支援B型事業施設「すこやかワクワーク」(板垣卓渡所長)の利用者が、女性に人気の「スイスチャード」やレタスの仲間「キトニア」といった珍しい野菜の水耕栽培を手掛けている。土耕と違って病害虫の被害がなく、天候に左右されずに安定収穫できるのがメリット。直接契約を結んで仕入れている飲食店の店主は「どの野菜も品質が良い。農薬を一切使っていないので安心してお客さんに出せる」と高く評価している。
すこやかワクワークは東京でコンサルティング業などを手掛ける「Blue Border」(瀬川武男代表取締役)が運営する。同社は2020年、酒田市の不動産業「東洋開発」の櫛引柳一代表取締役と共に設立した。倉庫だった建物を改装、水耕栽培の専用棚を設置した。板垣所長を含めて支援スタッフは7人。現在、知的、精神、身体障害者合わせて約15人が平日午前10時から午後3時(昼休み休憩含む)まで作業をこなしている。
育てているのはレタスの仲間「オテリー」やベビーリーフの一種「ウエバー」のほかニラ、ルッコラ、水菜、サンチュなどローテーションを組んで作っている。室温は21~22度に設定。種を発芽させて水と養分、発光ダイオードのライトを当てて成長を促す。野菜の品種にもよるが約1カ月程度で収穫期を迎える。農薬を使っていないためそのまま食べられる。
昨年10月7日に開所式をして間もなく1年を迎えるが運営は順調だ。焼き肉店や割烹(かっぽう)、ホテルなど約20件と直接契約を結び、定期的に出荷する。山形県のB型事業所平均工賃は全国平均より低い月1万1000円。同所の平均工賃は現在2万4000円で開所当時に掲げた目標の2万円をクリアした。販売の売上額が直接、障害者の工賃支払いに相当するため今後も付加価値の高い野菜生産を目指す。
現場チーフの二木明希さん(40)は「種まきから収穫、出荷まで一貫して行っているが、みんな的確にこなしてくれる。これからも施設利用者と一緒に品質のいい野菜を作っていきたい」と話す。三川町の県庄内総合支庁1階食堂で今月下旬に行った農業と福祉の連携「ノウフクランチ」に参加。ホウレンソウの仲間「スイスチャード」を収穫して納入した。
板垣所長(41)は「近く焙煎(ばいせん)コーヒーのほかにニンニクスプラウト(新芽)の水耕栽培も始めようと準備を進めている。特に庄内は障害者の働き場所と職種の選択肢が少ない課題を抱えている。今後も施設利用者がやりがいを持って働ける職場環境の向上を目指し、平均工賃が3万円、3万5000円と上げられるよう努力していきたい」と語った。
2023年(令和5年) 9月29日(金)付紙面より
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日本海を回遊するスルメイカを採取する本県の中型イカ釣り船のうち、「第八十六若潮丸」(本間健漁労長)が28日朝、酒田市の酒田港に帰港し、船内で冷凍した「船凍(せんとう)イカ」の水揚げ作業が行われた。本間漁労長は「数量が足りない分、値段でカバーできそう。探知機にイカの反応が出てきており、これからに期待したい」と話している。
本間漁労長によると、同船は8月中旬に酒田港を再出発した後、日本の排他的経済水域(EEZ)内の日本海中央部「大和堆」に向かってから北上、8月末からはロシア海域でスルメイカを追いかけた。当初は30日(土)まで同海域で操業する予定だったが、韓国船と入り会いになり、接触の危険性が高まったことから切り上げた。「台風の接近もなく、なぎ続きだったのが幸いした」(本間漁労長)という。
同船は28日午前6時ごろに着岸し同7時ごろから水揚げ作業。あいにくの雨降りの中、船員や県漁業協同組合職員が船内から冷気をまとった「船凍イカ」を次々と運び出し、冷凍庫に移した。
この日、水揚げされたのは約5100ケース(1ケース8キロ換算)で、前回8月の水揚げに比べて持ち直したものの、それでも例年比で3分の1ほど。県漁業協同組合の西村盛専務理事によると、全国的なイカの不漁に伴って取引価格が上昇し、良型では昨年に比べ4割ほど高い値が付いているという。同船は29日にも再び出航する予定で、12月末まで大和堆などでイカを追う。本間漁労長は「古里・酒田の活性化のため、少しでも多く水揚げしたい」と力強く語った。