2023年(令和5年) 10月3日(火)付紙面より
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酒田市飯森山の土門拳記念館(佐藤時啓館長)が開館40周年の節目を迎え、記念事業の一環としてトークイベントが1日、同市のホテルリッチ&ガーデン酒田で開かれた。共に同市が生んだ世界的写真家で名誉市民第1号土門拳さん(1909―90年)に師事した写真家の藤森武さん、堤勝雄さんの2人が内弟子時代の思い出などを語った。
土門拳記念館は、土門さんから全作品約7万点の寄贈を受けた市が83年10月1日、一人の作家をテーマにした世界でも類を見ない写真専門の美術館として開設。現在は土門さんの作品約13万5000点を収蔵しており、これらを広く紹介するとともに、土門さんに縁のある写真家の企画展などさまざまな催しを開催し、国内外から多くの来館者が訪れている。
この日は市民ら約100人が参加。記念館学芸員の田中耕太郎さんが「記念館のこれまで&これから」、藤森さんと堤さんが「弟子が語る古寺巡礼」をテーマにそれぞれ講話した。
このうち藤森さんは冒頭、「先生は人使いが荒かった。『一人だけだと殺されてしまう』と思い、約半年後に声を掛けたのが堤さん」と。これに対し堤さんは「当時の大卒初任給は1万8000―2万円。その時代、私は先生に給料として2万円頂いていた。かなりの厚遇だった」と続けた。
互いに内弟子として撮影助手を務めた平等院鳳凰堂、聖林寺十一面観音像、東大寺など「古寺巡礼」にまつわるエピソードについて藤森さん、堤さんは「撮影よりも、仏像を見ている時間の方が長く、寺には嫌われていたようだ。先生は偽物を絶対に撮らない人。そのため常にデータを収集していた」と語った。
一方、田中さんは「当初計画で記念館は2階建ての予定だったが、景観に配慮し平屋になった」など裏話を紹介しながら講話。「これから先、展覧会をどう盛り上げていくか。展覧会は写真集がベースとなっているが、新たな切り口による企画展なども考えていきたい」などと未来を見据えた。
引き続き記念祝賀会が行われ、今年6月に就任した佐藤館長(東京藝術大学教授)は「記念館は40年にわたり、凜としてそこにたたずんでいる。己の真を写すのが写真。真は心と解釈すると分かりやすい。写真文化の発信拠点として充実のため尽力していく」と謝辞。出席者が「これまで」「これから」に関する話に花を咲かせた。
2023年(令和5年) 10月3日(火)付紙面より
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酒田市日吉町二丁目の国登録有形文化財「山王くらぶ」で開催中の「第18回港町酒田の傘福展」の入館者が30日午後、1万人に達し節目となった都内在住の女性に記念品が贈られた。
展示は、酒田商工会議所女性会(岩間奏子会長)が2005年、女性会の設立25周年記念事業の一環とし、伝統工芸を復活させ後世に引き継ぐとともに、「庄内ひな街道」に彩りを加えようと企画。翌06年に第1回を行って以来、毎年開催している。18回目の今年は大小約50基を展示し、2月末に開幕した。
節目の入館者となったのは、市と友好都市交流協定を結ぶ東京都北区在住の会社員、福岡育代さん(61)。市が制定する本年度「第29回土門拳文化賞」で奨励賞を受賞した福岡さんは、翌1日の授賞式出席のため酒田入り。自転車で市内を散策中に山王くらぶに立ち寄り、1万人目となった。
コロナ禍の影響で入館者1万人突破は4年ぶり。セレモニーは大広間で行われ、傘福制作に携わる市内在住の女性でつくるNPO法人「かさふく」代表理事も兼ねる岩間会長が「酒田に縁のある女性で、選ばれるべくして選ばれたという感じ。幸せの輪をぜひ広げてほしい」と述べ、高さ30センチほどの傘福の置物を福岡さんに手渡した。
今野紀生市交流観光課長、荒井朋之酒田DMO理事長から祝福を受けた福岡さんは「とてもうれしく光栄に思う。これを機に酒田の文化についてもっと知りたくなった。ぜひ寺社につるされている傘福も見たい」と話した。
このほか、同日午後の入館者には記念品が贈られた。「湊町酒田の傘福展示」は11月5日(日)まで。