2023年(令和5年) 12月14日(木)付紙面より
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酒田市黒森地区の伝統芸能「黒森歌舞伎」(県指定無形民俗文化財)の正月公演(来年2月)を前に、関連行事「歌舞伎そばを楽しむ会」が12日昼、地区内の黒森日枝神社演舞場で開かれた。正月公演の成功を願い、一座「妻堂連中」(五十嵐良弥座長)の座員と保存会(菅井儀一会長)のメンバーがそばを食べながら懇談したほか、来賓として出席した鶴岡市出身の歌舞伎役者・中村橋吾さんが力強い演舞を披露した。
江戸・享保年間(1716―35年)から地区民によって連綿と受け継がれてきた黒森歌舞伎。同神社演舞場で来年2月15(木)、17(土)の両日行われる正月公演は、「白浪五人男」として知られる5人組の活躍を描いた「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)」のうち、弁天小僧の「知らざぁ言って聞かせやしょう!」という名ぜりふが飛ぶ「雪ノ下浜松屋見世先の場」、五人がそろって名乗りを上げる「稲瀬川勢揃いの場」の2幕を上演する。黒森小児童による少年歌舞伎は「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」のうち「吉田社頭車引の場」。
「―楽しむ会」は、妻堂連中が保存会関係者らを招いて地区特産のそばを振る舞うもので、半世紀余続く恒例行事。長く黒森コミセンで開催してきたが、歌舞伎の雰囲気をより味わってもらおうと一昨年から演舞場で実施。計約20人が参加した。
「歌舞伎そば」の歴史について菅井会長が紹介した後、矢口明子市長が「コロナ禍が明け、通常通りの正月公演ができると聞いている。成功を祈念する」、佐藤猛市議会議長が「酒田の文化度向上にこれからも尽力を」とそれぞれあいさつ。その後、座員が手打ちしたそばが振る舞われ、参加者は歌舞伎談義に花を咲かせながら味わっていた。
一方、橋吾さんは五十嵐座長のつけ打ちで創作歌舞伎を披露し、「酒田出身の若手歌舞伎役者も力を付けており、ぜひ一緒に酒田で公演したい」と述べた。五十嵐座長は「『浜松屋』は黒森歌舞伎として初演。本狂言、少年歌舞伎とも高いレベルのものを見せられるよう頑張っている。期待してほしい」と述べ、引き続きの支援をお願いした。