2024年(令和6年) 1月11日(木)付紙面より
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大型クルーズ船が地域の観光振興に果たす役割が注目される中、昨年4月に寄港が再開した本県唯一の重要港湾・国際貿易港である酒田市の酒田港には今年4月から10月にかけ、外国船7回、邦船1回の計8回の寄港が予定されている。10月5日には、同港としてこれまでで最大となる「MSCベリッシマ」(マルタ船籍、17万1598総トン、乗客定員5568人)が初めて訪れる。
大型クルーズ船内で豪華リゾートホテルのようなサービスを満喫しながら夜間に港から港へと移動し、日中は寄港地で下船、各地の特色ある観光を楽しむ。本県でも2016年4月、クルーズ人口増の波を地域活性化に生かそうと、酒田港の利用促進を図る官民連携組織“プロスパーポートさかた”ポートセールス協議会に「外航クルーズ船誘致部会」を設置し、積極的な招致活動を展開。さらに国土交通省酒田港湾事務所は、クルーズ船寄港地になっている古湊埠頭(ふとう)に設備更新の一環として係船柱や防舷材を整備した。これらが実を結び17年8月、初の外航クルーズ船「コスタ・ネオロマンチカ」(イタリア船籍、5万7000総トン、乗客定員1800人)が寄港した。
コロナ禍の影響で19年9月を最後に約3年半にわたって途絶えたが、コロナ対策緩和に伴って受け入れが再開。昨年4月にシルバーシー・クルーズ社が運航し、客船クラスが「ラグジュアリー」とこれまで同港に寄港した中で最も上位の位置付けとなるシルバー・ミューズ(バハマ船籍)が2回、ダイヤモンド・プリンセス(英国船籍)、初寄港となったル・ソレアル(仏国船籍)が各1回寄港。同11月にはダイヤモンド・プリンセスが2回訪れた。
酒田市ではクルーズ船を含め国内外の観光客の受け入れ体制を整えようと17年2月、官民で「酒田交流おもてなし市民会議」を設立。県や関係機関と連携して埠頭や市街地などでクルーズ船の乗客らをもてなしており、乗客から高い評価を得ている。
市がまとめた今年の酒田港へのクルーズ船寄港日程は次の通り。
▽4月8日(月)=ウエステルダム(オランダ船籍、初寄港、入港午前8時、出港午後7時)▽同10日(水)=ダイヤモンド・プリンセス(入港午前8時、出港午後5時)▽同11日(木)=ル・ソレアル(入港午前7時、出港午後6時)▽同21日(日)=ウエステルダム(入港午前10時、出港午後6時)▽5月2日(木)=にっぽん丸(入港午前8時、出港午後5時)▽同27日(月)=ル・ソレアル(入港午前8時、出港午後5時)▽同28日(火)=ダイヤモンド・プリンセス(入港午前8時、出港午後5時)▽10月5日(土)=MSCベリッシマ(初寄港、入港午前10時、出港午後7時)
2024年(令和6年) 1月11日(木)付紙面より
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伝統ある酒田凧(だこ)を後世に残す活動を行っている「酒田凧保存会」の会長を長く歴任し、現在も顧問として凧作りを指導する松田正美さん(93)=酒田市東栄町=の作品を集めた展示会が、同市日吉町二丁目の山王くらぶで開かれ、新春を祝う色鮮やかな凧が来館者の目を楽しませている。
1970年代に市内の旧家から見つかった凧の下絵集には「万延元年」「慶応元年」の表記があったことから、酒田凧の歴史は江戸時代末期までさかのぼるとされ、明治期には主として左官職人が仕事の減る冬場に壁塗りの骨組みに使う竹で凧を制作し卸していたという。
下絵集が見つかったことを受け伝統ある酒田凧を残していこうと75年、有志が集まって保存会を設立。松田さんはじめ会員らは酒田凧を制作する傍ら、市内のイベントで子どもたちに凧作りの楽しさを教えるなど、後世に引き継ぐ取り組みを続けている。
酒田凧は庄内地方に吹く強い西風でも壊れないよう作りが丈夫に工夫されており、大胆で力強い絵柄が特徴。凧の絵柄は大阪から北前船で運ばれてきたと考えられている。
今回の展示では、酒田凧特有の文様である人物の全身が描かれた「人凧」や「頭出しやっこ凧」のほか、色鮮やかに描かれた「武者凧」「だるま凧」など大小計約50点が大広間に並ぶ。
中でも「文人墨客の間」に飾られた松田さんが20年以上前に制作したという「亀凧」は、一畳ほどの大きな凧に立派なカメが描かれ、その迫力から来館者の目を引いていた。松田さんは「揚がった時の楽しさを子どもたちにも伝えたい。見た人に興味を持ってもらえたら」と話す。展示は28日(日)まで(3月までは毎週火曜休館)。