2024年(令和6年) 7月13日(土)付紙面より
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今月初め、酒田市で木造2階建ての建物が倒壊して市道をふさぎ、一時通行止めになった。倒壊したのは空き家と一体化している倉庫兼車庫。十数年前から空き家になり、小動物も出入りしていたというから、傷みの度合いはかなり進んでいたのだろう。家は人が住まなくなり、風通しが悪くなると傷みが進む。
過疎化、高齢化、少子化、さらには人口流出。地方で深刻になっている空き家対策を講じたいと、酒田市で民間による「こ家(や)プロジェクト」がスタートした。市街地での空き家所有者と購入者をつなぐ仕組みを構築するという。木造建築は大事に住めば耐用年数は長い。空き家を見直すことでの活用につながることを願いたい。
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酒田市内の空き家は今年1月現在で約2600棟、その約6割が旧市内にある。市中心街の空洞化が叫ばれる中で、空き家はその現実といえる。こ家プロジェクトは、市内の総合建設業・菅原工務所が地元企業の協力で手掛ける。空き家の所有者と購入者が抱える問題や希望を聞き、双方の接点を見つけながら空き家の抑制につなげていくという。「こ家」は▽古い▽小さい▽個性的な―空き家を言い表す意味で、プロジェクトでは高校生らの意見も参考にする。
空き家対策に悩むのは鶴岡市も同様だ。老巧化して居住が困難になった空き家と土地を所有者から無償で譲り受け、解体・整地後に若者世帯や移住者に住宅用地として供給する「市中心市街地居住促進事業」を実施したこともある。他県からの移住希望者もあったが、そうした再活用は行政の支援があっても、支援・再活用を上回るペースで空き家が増加している。
同市では市郊外の「危険空き家解体補助金制度」で、空き家を解体したこともある。築年数が古い家屋は狭い道路に面しているケースが多くて解体作業も困難で、空き家対策にはさまざまなリスクが付きまとう。万一倒壊すれば災害時の避難経路の妨げにもなる。高齢化社会での心配事だ。
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人口減少社会では、空き家の増加は今後も避けられない。行政による対策も重要になってくるが、空き家は個人の財産であり、個人の責任で処分するのが大前提。ただ、所有者が高齢で収入が少なければ、費用を負担できなかったり、所有者不明のケースもある。
空きビルを改装して学生のシェアハウスとしたケースもある。また、買い物弱者は郊外だけでなく、中心街でも問題になっている。空き家活用は買い物の利便性など、周辺の生活環境にも左右される。古民家の改装前・後を紹介するテレビ番組もある。しかし、そうしたケースを人口減少が進む中心商店街に当てはめるには、理想と現実の隔たりがありそうだ。人口が右肩上がりで増えた時代と違い、空き家対策は先の見えない課題になっている。解決策の名案はないものだろうか。