2024年(令和6年) 8月29日(木)付紙面より
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大正時代に酒田で誕生したものの、現在はほぼ姿を消したことから「幻の米」といわれる食用米「酒田早生」の稲刈りが27日、酒田市豊原地区で行われた。酒田早生を用いて同名の日本酒を醸造する清酒「上喜元」の酒田酒造(同市日吉町二丁目、佐藤正一社長)では「今年は450本の限定販売ですぐに売り切れてしまったが、収量も倍に増えたので、今後はもっと多くの人に酒田早生の酒を楽しんでもらえるのではないか」(佐藤社長)と期待している。
酒田早生は1912(大正元)年、商業施設「いろは蔵パーク」の建設工事が進む酒田商業高校跡地にあった豪商・本間家の農場「新井田農場」で、「万石」の変種を育成して誕生。当初は「万石2号」と呼ばれたが、26年に改称した。29年に県奨励品種となり、最盛期には本県だけでなく近県でも栽培され、31年には東北全体で1万3000ヘクタールに作付けされたという記録がある。戦後まもなく品種改良の進展に伴い衰退したという。
庄内町の「亀の尾」をはじめ、地元在来品種で醸した日本酒は他市町にはあるが、酒田にはないことから「地酒の中の地酒」を造ろうと、県農業総合研究センター水田農業試験場(当時)の場長を歴任した大渕光一さん(酒田市)らが呼び掛け、同社杜氏(とうじ)でもある佐藤社長らと協力し、昨年から酒造りに取り組んだ。先月には日本酒「酒田早生」(720ミリリットル)450本を限定販売し、即完売となるなど人気を博した。
今年は昨年に引き続き、豊原地区の農業、伊藤雅則さん(54)に同社が栽培を依頼し、15アールの水田で5月中旬に田植えを行った。
この日の稲刈りには、佐藤社長、大渕さん、酒田酒造社員ら計8人が参加。現在の品種などより約20センチ丈が高く、高さ1メートルほどに実った酒田早生を角など機械が入れない部分を鎌で手刈り。引き続きコンバインを使って刈り取りし、1時間ほどの作業で約400キロを収穫した。10月ごろから酒造りに入るという。
大渕さんは「酒田古来のものを使って未知の挑戦をしてもらい、おいしい酒に仕上げてもらった。今回の出来にも期待している」と喜んだ。佐藤社長は「東京の酒田出身者にも酒田早生を飲んでもらい好評だった。今後、田植えなどを体験できるようにすれば交流人口の拡大にもつながるのでは」と話していた。
2024年(令和6年) 8月29日(木)付紙面より
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国際ボランティア学生協会(略称・IVUSA、本部・東京都、小熊日花学生代表)の学生らによる日本海沿岸清掃活動が27日、遊佐町の西浜海岸で始まった。31日(土)までの5日間、酒田市から遊佐町にかけて漂着ごみの回収活動を行う。
IVUSAは首都圏・関西圏を中心に全国約80大学の学生約2500人が加盟しているNPO法人。ボランティア活動は県内の産学官民でつくる「美しいやまがたの海プラットフォーム」(代表・小谷卓鶴岡高専名誉教授)、東北公益文科大学(神田直弥学長)、県庄内総合支庁と連携して2016年から実施している。12回目となった今回は関西、関東、東北一円の学生と共に県内の公益大、山形大、鶴岡高専などから計62人が参加。酒田市のNPO法人・パートナーシップオフィスの関係者7人と共に期間中、酒田市飛島の田下海岸、遊佐町吹浦の西浜海岸、同町菅里の十里塚海岸一帯で清掃活動を行う。
初日の27日は西浜海岸約200メートルの範囲で活動。時折強い風が吹く中、学生たちは励まし合いながら砂浜に散乱したプラスチック類の破片やペットボトル、外国語が印字された漂流物を熱心に拾い集めた。中には砂に埋まった状態の大きな漁網ロープなどもあり、互いに声を掛け合い協力して掘り出していた。
県外から参加した東北大2年の瀬戸口瑞歩さん(19)=茨城県出身=は「想像よりも多くのごみが散乱していて衝撃を受けた。捨てるのは一瞬だけど拾うのはその何倍も大変な作業。5日間積極的に取り組んで多くのことを学びたい」、公益大1年の五十嵐舞衣さん(19)=米沢市出身=は「海岸清掃に初めて参加し、県内に住んでいたが沿岸地域の現状を初めて知った。全国の学生たちが共に活動してくれることがありがたい。情報を発信し、活動を広げていきたい」と話した。