2006年(平成18年) 1月24日(火)付紙面より
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鶴岡市出身の作家・藤沢周平さんをしのぶ「寒梅忌」が22日、市中央公民館で開かれた。県内外から多くのファンが訪れ、しのぶ会や記念講演などで藤沢さんの人柄や思い出を振り返った。
寒梅忌は、藤沢作品に梅がよく登場することや、風雪に耐えて咲く姿が藤沢さんの人柄や作風にもつながることにちなんだイベント。鶴岡藤沢周平文学愛好会(萬年慶一会長)が2000年から毎年、開催している。
今回は2部構成で開催。第1部の追悼式では、同愛好会顧問で藤沢文学研究者の松田静子さんの進行で、藤沢さんが鶴岡中(現鶴岡南高)夜間部時代に文選工として勤務していた鶴岡印刷の平田正相談役と、荘内日報論説委員の水戸部浩子さんが対談した。
庄内出身者などで集まり藤沢さんを囲んだ周談会のメンバーだった平田さんは、藤沢作品の魅力については「読む人それぞれの奇遇によって印象が違う作品の幅の広さ」と語った。水戸部さんは取材で藤沢さんの東京の自宅に何度か訪問した際の思い出を語り、「口数が少なく、説教染みたことは一切言わない方だった。小説のアドバイスを受けた際は、最初から奇をてらった作品を書くような人間は、物書きとしては長続きしないよと教えてもらった」と人柄を紹介した。
第2部では、熱烈な藤沢ファンというシンガーソングライターの小室等さんが弾き語りをしながら、NHK金曜時代劇「蝉しぐれ」の音楽を担当したエピソードなどに触れた。
一方、寒梅忌に合わせて21―23日の3日間、同公民館大視聴覚室で「藤沢周平こころの絆展」が開かれた。公開中の映画「蝉しぐれ」で使用された衣装、山形新聞連載時の挿絵の原画、松田さんが公開講座で扱った物語解説の資料など各種関連資料を展示。
また、「隠し剣 鬼の爪」「たそがれ清兵衛」「蝉しぐれ」の映画3作品の庄内ロケ地の写真、昨年に都内の世田谷文学館で開催された「藤沢周平の世界展」の資料やエッセイといった直筆原稿、愛読者の俳句、短歌作品などゆかりの作品が並んだ。
「寒梅忌」で、大勢のファンが藤沢さんの人柄や作品に思いを馳せた