2006年(平成18年) 2月3日(金)付紙面より
ツイート
鶴岡市黒川地区の鎮守・春日神社の例大祭「王祇祭」が1日から2日にかけて行われ、黒川能(国指定重要無形民俗文化財)が同地区の上下両座の当屋で夜を徹して奉納上演された。
今年の当屋は、上座が渡部正二(屋号・作右衛門)さん(78)=上の山、下座が蛸井藤三郎(屋号同)さん(80)=小在家。両座とも能五番と狂言四番を基本に、下座はめでたい席での「付祝言」として能「弓八幡」を追加上演した。
1日早朝、扇の形をしたご神体「王祇さま」2体が春日神社から両当屋に移り、午後6時からそれぞれの当屋内に設置した舞台で奉納舞が始まった。例年、地元では「王祇祭の日には雪が降る」といったいわれがあり、この日は日中から重く湿った雪が降り続いた。
このうち下座の蛸井さん方では屋内に巨大な一貫目ろうそくがともされ、幼児の舞で魔縁を鎮め安穏を祈る「大地踏」で幕開け。場を清める「式三番」に続き、能「高砂」や豪快な獅子の舞が目を引く「石橋」などが次々と演じられた。会場には笛や鼓の音が響き渡り、厳かに舞う演者の姿に、全国各地から訪れた観光客は静かに見入っていた。
2日朝は、両座の若衆が競って王祇さまを神社に担ぎ入れる「朝尋常」の後、午前10時すぎから神社の舞台で再び能が奉納された。続いて、先を争って社殿の棚に駆け上がる「棚上り尋常」など、両座競争の神事が勇壮に繰り広げられた。
揺れるろうそくの炎に照らされて、幻想的な舞が繰り広げられた=1日、下座当屋