2006年(平成18年) 2月8日(水)付紙面より
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酒田信用金庫(本部・酒田市本町三丁目)の臨時総代会が6日、酒田産業会館で開かれた。不良債権の増大に伴い悪化している財政基盤の強化を目的に信金中央金庫の「優先出資」を受けるための定款変更、経営責任を取り退任した谷義雄前理事長ら代表理事3人の後任人事で、前信金中金信用金庫部上席審議役の加用貞二氏(52)、前同部次長の岡島尚也氏(44)の就任を承認した。引き続き開かれた理事会で、加用氏が理事長、岡島氏が常務理事に就き、専務理事は空席とした。
酒田信金が公表している昨年9月末現在のディスクロージャーによると、金融機関の健全性を表わす自己資本比率は6・13%程度で、国内基準の4%は上回っている。不良債権残高は、「破産更生債権・準ずる債権」18億100万円、「危険債権」12億5100万円、「要管理債権」46億3100万円の計約76億8300万円。預金残高は509億3300万円、貸出金残高は399億6500万円。ただ、昨年秋には大口取引先の建設機械卸・整備会社が自己破産を申請するなど不良債権がふくらみ、05年度決算では、自己資本比率が4%を切る可能性が出てきた。
自己資本比率が4%を割り込んだ場合、金融庁により業務改善命令が発動されるため、早期の経営改善が求められていた。水面下で地元金融機関による「救済」も探られたが、信金中金による優先出資の受け入れと役員態勢の刷新で経営再建を目指すことになった。
臨時総代会、理事会終了後に加用理事長、岡島常務理事、谷前理事長らが会見した。
谷前理事長はこれまでの経過について「不良債権を処理するためには金庫の自己資本、内部留保、出資金では対応力が非常に厳しい。業界にある『信金経営力強化制度』を活用し資本注入をお願いした」と述べた。融資の際の審査が甘かったのでは、との指摘には「結果的に言えば、甘かったと言える。金庫としても努力はしてきたが、なかなか想定できなかった部分があった」とチェック態勢の甘さを認めた。
谷前理事長、加用理事長によると、酒田信金が60億円分の優先出資を発行し全額を私募債で信金中金が引き受ける。酒田信金の出資金をこれまでの9億1300万円(今年1月現在)から69億1300万円に増資。このうち半分の30億円を不良債権処理に充当することができる資本準備金勘定に組み入れる。優先出資の受け入れにより今年3月期の自己資本比率は「10%を超える」(岡島常務理事)見通しという。
加用理事長は「信用金庫の精神を守り経営に当たりたい。ただ、今回は多額の不良債権の問題が生じており、過去の誤った部分を正すため今後、引き継いだ段階で検討していきたい」と抱負を述べた。
臨時総代会、理事会終了後に会見した加用新理事長(左)と谷前理事長