2006年(平成18年) 2月10日(金)付紙面より
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県庄内総合支庁農業技術普及課産地研究室(酒田市浜中、旧砂丘地農業試験場)は、冬季にパイプハウスで啓翁桜など花木の促成を行う場合に、着脱が簡単な新システムを民間と共同で開発した。床暖房のシステムを応用したもので、施工、運転コストとも安価で、室内の温度ムラがなく開花がそろい、夏場は取り外して他の作物を作れるなどメリットが多いという。産地拡大や育苗、山菜などへの応用にも期待が高まっている。
同研究室によると、花木を促成する場合、半地下のハウスにボイラーを入れ、地面近くに煙突をはわせ、その上にすのこ状の床を設置する専用の促成室を整備するのが一般的。煙突からの輻射熱などで室内の温度ムラがなく、質の高い製品ができる一方、広さ20坪(約66平方メートル)で導入経費が100万円程度と比較的高く、春―秋は他の用途に使えないという短所がある。
このほかに、導入経費が比較的安い温風式もあるが、室内の温度ムラが大きく、開花時期が揃わないなど品質管理が大変なことから、花木促成をしたくても二の足を踏む人も少なくないという。
このため同研究室では、春―秋は別の用途にも使えるように「着脱可能で簡単なシステム」を念頭に2004年度、床暖房システム施工の「オンドルジャパン」(酒田市大宮、松田修一社長)との共同研究に取り組み、新システムを開発した。
新システムは、畳1枚分ほどの大きさのパネルにポリエチレン管を巡らせ、鉄板で蓋をしたものをつなげてハウス内に設置。家庭用給湯ボイラー(灯油式)でお湯を循環させるもの。啓翁桜の枝を、水を張ったバケツに入れておくと、均一に開花する。温度ムラがなく、パネルは一般農家でも簡単に着脱できる。
コスト面では、広さ10坪(約33平方メートル)で40万円程度で導入できる上、運転費用は温風式の70%程度と安価。さらに構造が簡単で耐荷重性、耐水性にも優れているという。
昨夏に新システムの技術を公表したところ、今冬は県内全域から同研究室へ、農家の視察が相次いでいる。これまで全県で6戸が新システムを導入し、「開花のそろいが良い」など好評という。
同研究室で研究に中心的に携わった菅原敬専門研究員は「レンギョウやユキヤナギ、サクラなど他の花木、育苗、山菜などにも応用できそう。すでに国内有数の産地となっている啓翁桜のさらなる産地拡大や、新たな作物の導入につながれば」と語り、期待を寄せている。
着脱可能な花木促成の新システム。奥は菅原専門研究員