2006年(平成18年) 2月12日(日)付紙面より
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県は、地域の産業振興などを目的とした慶応義塾大先端生命科学研究所(鶴岡市)への教育研究補助を、新年度以降も継続する方針を固めた。メタボローム(細胞内全代謝物)研究の世界的拠点としての地位を築き、新たな産業創出への期待が高まる同研究所を支える。研究所が開設された2001年度から「当面は5年間」としていた補助が本年度で区切りを迎えたことや、県の厳しい財政事情などから、財政支援を継続するかどうか判断が注目されていた。
県と庄内14市町村(当時)は東北公益文科大の開学にあたり、慶応大側から東北公益大に知的支援を受けるとともに、地元の産業振興に向けた科学技術の向上と人材育成に寄与してもらうことなどを盛り込んだ協定を締結。これに基づき県などは、同研究所を核とした知的部門の交流・集積や地域への研究成果の移転促進を目的に01年度から財政支援を行ってきた。
本年度までの5年間で、研究基金の造成や教育研究補助として計約45億円を、県と鶴岡市が分担した。新年度は年間7億円程度を補助し、引き続き県と同市が分担。県は同研究成果を検証しながら、さらに5年程度の財政支援を想定している。
同研究所の冨田勝所長らが開発したメタボローム解析技術は、微生物から一度に数千個の代謝物質の分析を世界で初めて可能とするなど、世界的な注目を集めている。昨年6月には世界メタボローム学会の初の国際会議が鶴岡市で開催されたほか、開発技術は数多くの賞を受賞するなど国内外で高い評価を受ける。
メタボローム解析技術は、創薬など医薬品開発や食品分野をはじめ多方面への応用が期待されている。すでに国内大手の食品、創薬関連企業との共同研究が展開され、理化学研究所と共同で植物のメタボロームに関する重点的な研究も行っている。03年7月には同研究所発のベンチャー企業「ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ」が鶴岡市内に設立された。
研究所への財政支援について、これまで齋藤弘知事は「5年間の成果を検証したうえで判断したい」としていた。県は、研究所の世界最先端の技術を基にした産業創出の可能性を評価し、支援継続を判断した。