2006年(平成18年) 2月19日(日)付紙面より
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酒田海上保安部(吉田輝昭部長)所属の巡視船「とね」(496総トン)が、3月18日付で解役となることが決まった。1952年3月に初代が就役して以来、現在の2代目まで半世紀余りにわたり庄内沿岸の海上保安を担ってきた「とね」という名称の巡視船はなくなる。巡視船としての役目を終える「解役式」は第二管区海上保安本部(宮城県塩釜市)で行われるため、塩釜市に向かう“最後の出動”の際、酒田海保は「感謝する会」を兼ねた出航式を開く予定。
酒田海保は海上保安庁酒田海上保安署として48年に設置、50年に海上保安部に昇格した。その2年後に初代の巡視船「とね」(270トン型)が配備、76年まで24年間にわたり活躍した。2代目の「とね」は350トン型とひと回り大きくなり同年11月に就役した。
2代目「とね」の就役からの総航行距離は地球15周半分にあたる33万7266カイリ(約62万4600キロ)。海難救助出動は340件、救助人員は413人。96年5月に酒田港で発生した中国人集団密入国事件の際、船内で事情聴取など行った。
築造から30年が経ち老朽化してきたことや、日本海沿岸地域での各種事犯への対応、海難救助活動の強化を目的に解役することが決まった。
「とね」に代わって酒田海保に配備されるのは現在、新潟海保所属の高速特殊警備船「つるぎ」(220総トン)。99年3月に発生した「能登半島沖不審船事案」を機に建造されたもので、2001年2月に就役した。ウオータージェット推進による40ノット(時速約75キロ)以上の速力で、20ミリ機関砲、夜間でも捜索監視が可能な「赤外線捜索監視装置」など配備しており不審船などへの対応能力の強化を図っている。
今回、酒田海保所属の巡視艇「やまゆき」は、「はまゆき」と船名を代えて石川県の七尾海上本部へ新配備。酒田海保は1980年の巡視艇「べにばな」就役以来、巡視船艇3隻体制が続いていたが、今春からは「つるぎ」「べにばな」の2隻になる。
酒田海保の岩間直志管理課長は「半世紀余りにわたり所属してきた『とね』は酒田港の移り変わりをすべて見てきた巡視船。救助された船舶・人だけでなく、体験航海や夕焼けクルージングなどを通し『とね』と親しんだ人も多いのでは。『とね』は2代にわたって酒田に密着していた」と話した上で、「出航式では、海保OBや一般市民も招き大勢から見送ってもらいたい」と語った。
解役されることになった酒田海保の巡視船「とね」(上)、新配備されることになった高速特殊警備船「つるぎ」