2006年(平成18年) 7月12日(水)付紙面より
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酒田市の松原小学校(那須栄一校長、児童617人)の6年生が11日、同市の大浜海岸でスキューバダイビング体験をした。児童たちはインストラクターの指導で海に潜り海洋生物を観察し、環境保全の大切さを感じ取った。
この体験は、海洋生物の保護や環境教育を行っているNPO法人「みなと研究会」(本部・酒田市緑ケ丘一丁目、守屋元志代表)と同校が、環境学習の一環として普段見ることの少ない海洋生物を海中で観察してもらおうと企画。同法人と同校は昨年、一緒に酒田北港の通称・水路にハタハタの産卵床を制作するなど交流を続けている。
この日は6年生のうち3、4組の53人と、ダイビングインストラクターの資格を持つ同法人会員ら7人が参加。児童たちはマウスピースのくわえ方、レギュレーターでの呼吸法、耳抜きの仕方など習った後、ボンベを背負ってインストラクターとともに海の中へ。児童の1人、齋藤ゆり子さんは「最初は怖かったけれど、だんだん慣れてきて楽しかった。小さなフグの大群がいてびっくりした」と、海中探索を楽しんでいた。
また、浜で待機している児童を対象に酒田海上保安部職員が海水浴の際の注意点などを講話した。那須校長は「海は酒田のメリットであり、資源の一つ。地域を知る意味でも貴重な体験」と話していた。12日は1、2組53人が体験する予定。
スキューバダイビング体験をする松原小児童
2006年(平成18年) 7月12日(水)付紙面より
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酒田市の県立日本海病院(新澤陽英院長)が中心となり、医療従事者らを対象にした二次救命処置研修(ACLS、またはICLS)を同病院などで開いている。救命率向上のため、庄内地方の医療、救急関係者らで実行委員会をつくり、2003年6月から続けているもので、これまで41回の研修で受講者数は1000人を超え、全国トップレベルの実施実績となっている。実行委代表の加登譲・日本海病院副院長は「市民は市民で、病院は病院で、みんなが救急処置をできるようにしたい」と普及への思いを語り、今後は一般市民対象の一次処置の普及にも力を入れたい考えだ。
ICLSは、一次処置(心臓マッサージや人工呼吸、自動体外式除細動器=AED)に対し、主に医療機関で行われる救命処置の標準的な研修コース。「突然の心停止に対する最初の10分間の適切なチーム蘇生の習得」を大きな目的に、一次処置の習熟、気管挿管を含む気道確保・管理、薬剤の投与などを総合的に習う。現場では以前から、医師によって処置の手順が異なったり、そのために補助役の看護師が戸惑ったりというケースもあり、統一した手順の普及が課題となっていた。
庄内地方では、日本海病院の加登副院長を中心に、酒田、鶴岡両地区の医師会、広域消防の関係者ら有志が2003年3月にACLS庄内実行委員会を結成。同年6月から国際的なガイドライン(指針)に沿って研修をスタート。その後、同実行委の研修は日本救急医学会の認可研修コースの一つになっている。
これまで日本海病院を中心に本間病院(酒田市)、荘内病院(鶴岡市)などで計41回の研修を開き、通算1014人が受講した。内訳は66%が看護師、23%が医師、10%が救急救命士・救急隊員など。地域別では庄内を中心に、内陸や秋田県など県外からも受講している。
日本海病院のまとめによると、2003年以降、今年6月25日まで日本医師会に報告のあったICLSの開催回数を都道府県別に見ると、最も多い大阪府98回、2番目の愛知県56回に次ぎ、山形県は東京都と並んで3番目に多い52回。主催団体別では大阪府医師会90回に次ぎ、ACLS庄内実行委員会が37回で2番目。「大阪は地区ごとの取り組みを府全体で集計したもので、単独組織としておそらく庄内が全国一」
(加登代表)という実績。
研修は1日がかりで実技を中心に行う。指導や補助役のスタッフは地元の医師や看護師、救急救命士らで、これまで延べ約1700人が従事。交通費などを除き、基本的には無報酬のボランティアという。
看護師の気管挿管などは医療現場では許されていない。しかし、研修で体験することで手順や機器類への理解が深まり、現場での冷静でスムーズな補助につながるという。
9日に日本海病院で開かれた41回目の研修には、庄内地方の看護師と秋田市の救急救命士2人、合わせて22人が参加。5、6人ずつ4班に分かれ、スタッフ35人の支援で、人形を使った処置の総合訓練などを実習。リーダー役の指示の下、人工呼吸用のマスクを着けたり、除細動器で電気ショックを与えたりと、本番さながらに取り組んでいた。
加登代表はICLSの普及効果について、「数値は出ていないが、救急現場が静かになってきたと言われている。いろんな立場の人が一緒にやることで、(昨年12月のJR羽越本線の)いなほの脱線事故現場でもお互いに顔を知っていてスムーズに連携できた。特に若手の医師が積極的に取り組んでおり、これからの日本の医療は変わっていくと予感させるものがある」とする。
また、全国に誇る実績をつくってきた背景について、加登代表は「救急処置を地域に定着させたい、みんなができるようにしたいという思いが根底にある。最初が大切」と語り、1分1秒の違いが生死を分ける心停止時の対応を、1人でも多く習得する大切さを強調している。
受講者が1000人を超えたACLS庄内実行委の研修=9日、日本海病院