2006年(平成18年) 8月4日(金)付紙面より
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鶴岡市立朝暘第一小学校の学校司書として学校図書館活用教育を支えている五十嵐絹子さん(59)=鶴岡市上畑町=が、学校司書のあり方などをまとめた「夢を追い続けた学校司書の四十年―図書館活用教育の可能性にいどむ―」が国土社から刊行された。
五十嵐さんは1966(昭和41)年以来40年間、鶴岡市の専任学校司書として同市内の5小学校、2中学校に勤務。朝暘一小には95年に赴任した。共著に「学校図書館活用教育ハンドブック・こうすれば子どもが育つ学校が変わる」(朝暘一小編著・国土社刊)など。田川司書の会代表。
五十嵐さんが本をまとめるきっかけとなったのは、2003年5月に朝暘一小が全国学校図書館協議会(本部・東京都)が制定する学校図書館賞大賞を受賞したこと。同大賞は1974年以来、「該当なし」が続いた幻の賞で、小学校が受賞したのは同校が初。
その取り組みを学ぼうと、全国各地から教育関係者などが多数同校を視察に訪れ、これまで来校者は1500人を超えている。こうした状況で2年前、出版社側から「図書館を支えてきた学校司書として、これまでの歩みをまとめてみないか」と五十嵐さんに打診があり、定年退職を間近に控え「後進の人たちへ伝えたいことはすべて書き残そう」と執筆を決めた。
「―学校司書の四十年」は全5章。第1章では学校司書の一日や年間の仕事、仕事のコツのほか、学校司書の必要性などについて述べている。第2章では自らの幼少時代の経験と学校司書になったきっかけに触れながら、「学校図書館の可能性」に気付き、仕事に打ち込んだ様子をまとめた。
第3章では、「本ぎらいの子供たち」への対策を実践レポートとしてまとめた。この中で、不読児童への診察記録として「読書カルテ」を作成し、図書館の働きかけや担任からの助言、読み聞かせの反応など細かく記録した上で、「一人ひとり興味に合致した本とめぐり会わせることによって、(中略)読書への興味を持たせることができると考える」と述べている。
第4章は朝暘一小の図書館活用教育(図書館づくり)への取り組みと、飛躍的に高まった学校教育との関連性や、五十嵐さんが期待する図書館の今後の展開など。
第5章は学校司書の目から見た不登校児や協調性の足りない児童などについて、児童と本の出合いがもたらしたさまざまなエピソードを書き記した。
五十嵐さんは「この本は、ただ学校司書の仕事を紹介するだけのものではない。学校図書館にとって、本を読みたい子供たちにとって、学校司書がどれだけ必要な存在か。その意味を伝えたかった」と話し、「鶴岡市は全国に先駆けて学校司書を正規職員として大規模校を中心に配置してきた。それが近年、非常勤職員への切り替えが始まっている。市職員は市民へのサービスが仕事。学校司書は『小さな市民』の子供たちへ図書館を利用してもらおうと頑張っていることに気付いてほしい」と語った。
四六判、240ページ。1785円(税込み)。各主要書店で取り扱っている。
学校司書としての取り組みや重要性をまとめた五十嵐絹子さん
2006年(平成18年) 8月4日(金)付紙面より
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国土交通省東北地方整備局は、先月13日から同15日にかけ鶴岡市小岩川の国道7号が土砂崩れのため全面通行止めとなった影響をまとめた。全面通行止めの間、影響を受けた自動車は約1万台で、うち約7000台が国道345号などを通る近隣ルートで、約2000台が小国町など国道113号、同13号などを通る広域ルートでう回し、走行費用が約4600万円増加したと推計している。
交通への影響は、全面通行止めとなった13日午後8時すぎから片側交互通行に切り替わった15日午後1時20分まで約42時間について、隣県を含む要所の交通量計測システムによる交通量データなどから推計したもの。
全面通行止めに当たって同整備局などではう回路として、小型車は近隣の下り(鼠ケ関から小名部、小国、大岩川に抜ける市道・県道ルート)、同上り(浜温海から温海川、関川、鼠ケ関に抜ける県道・国道345号ルート)、大型車は広域(新潟県荒川町から小国町、山形市、鶴岡市に抜ける国道113号・同13号・同112号ルート)を設定し、利用を呼びかけている。
まとめによると、小岩川付近の通常の交通量(全面通行止めとなった時間帯の推計)は1万3950台。これに対し、全面通行止めに伴い近隣ルートでう回した車両は6990台、広域ルートでう回した車両は1960台、運行を中止した車両が1170台で、計約1万台が影響を受けたと推計されている。
う回路を使った場合の走行距離は、近隣下りで12・4キロ、同上りで28・9キロ、広域ルートで108キロそれぞれ増加。走行時間はそれぞれ、20分、37分、2時間35分増加した。走行費用の増加分は約4600万円で、1台平均約5200円とはじき出している。また、同整備局では全面通行止めになってから片側交互通行が解除された23日まで、う回路の分岐点付近などでドライバー約2000人にアンケート用紙を配布し、全面通行止めの運行への影響を調査。これまで郵送で回答のあった453人分を集計したところ、「運行に影響があった」が63%、「なかった」が37%だった。「影響があった」人の内訳は、「予定時刻に遅れた」35%、「運転疲労が増した」26%、「予定行動を変更した」19%、「予定行動を中止した」8%など。
取りまとめた同整備局道路計画課第2課では「今回は、地理上のこともあり、国道とJRが同時に被害を受けてストップしたのが大きな特徴。近隣にう回路があったのが救いで、なかったら影響はもっと大きかったはず。長期的には日沿道を含め、代替ルートの確保が不可欠」としている。今後も観光や企業、地域への影響などを含め精査していくという。