2006年(平成18年) 9月15日(金)付紙面より
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酒田市の港南小学校(鳥海祥子校長、児童220人)で13日、「理科実験の工作の達人」の後藤道夫さん(長野県飯田市)を講師に招いた理科の授業が行われ、6年生たちが紙で「反射神経測定器」を作るなど、楽しみながら科学を学んだ。
社団法人日本理科教育振興会が昨年度から文部科学省の委嘱を受け、各界の著名人を講師として派遣している「その道の達人」派遣事業の一環。県内では本年度、小学校としては港南小がただ1校、対象に選ばれた。
講師の後藤さんは、工学院大、明治大などで教べんを執り、ベストセラー「子どもにウケる科学手品77」(講談社)などの著書がある、いわゆる「おもしろ実験」の草分け的存在。この日は6年生54人に、慣性の法則やブーメランの原理などをゲーム感覚で学ぶ4つの実験を指導した。
このうち「反射神経をはかる」と題した実験で後藤さんは、「人間の反射神経(反応速度)の平均は0・2秒。その間に物体は約20センチ落下するので、他人が手を離したお札を、落ち始めてから指ではさんで取ろうとしても、絶対に取れない」と、千円札を使って実演。子供たちは細長い板状の紙に目盛りを付けた「反射神経測定器」を作り、ゲーム感覚で歓声を上げて遊びながら自然の摂理の不思議さを体感していた。
反射神経測定器(白い紙)で遊ぶ港南小の子供たち
2006年(平成18年) 9月15日(金)付紙面より
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県立日本海病院と市立酒田病院の機能連携問題で、齋藤弘知事と阿部寿一酒田市長は13日夕、両病院を統合再編することに合意した。併せて、統合再編に向け県と市による協議会を設置し、経営形態や医療機能の分担・連携、施設整備など統合の具体的な姿を検討することにも合意した。統合の時期についても協議会の場で詰めていく。協議会は、早ければ来月にも設置する方針。酒田病院の改築構想を機に浮上した両病院の機能連携をめぐる問題は、統合の形で決着することになった。県立病院と市町村立病院の統合は、県内では初めてのケースとなり、全国的にもこうした事例は少ない。
齋藤知事が同日、阿部市長に電話で両病院の統合再編と協議会設置を提案し、了承を得た。前日の12日には、中村護同市助役が県庁を訪れ、合意内容の最終調整を行った。両病院の統合は、酒田市側が先に提案していた。
統合再編を判断した理由について県は、医師確保が困難になってきている状況の中、▽両病院に重複する機能を分担・集約化することで質の高い医療を確保し、地域住民に高度な医療サービスを提供できるようになる▽地域で医療を安定供給していくためには、地域全体で適正な病床数と診療体制を確保し、将来にわたって安定した病院経営を行っていく必要がある―ことなどを挙げている。
統合病院の設置主体は、県が監査法人に委託した県立病院事業分析評価調査の報告書で示された、一部事務組合方式が有力。県と関係市町を構成団体とした公立置賜総合病院がこの方式で、統合病院は地域の拠点病院となることを考慮して、新たな一部事務組合は県と酒田市に限らず、周辺の遊佐町と庄内町を加えた「北庄内地区」による構成も検討されるものとみられる。
また、運営形態については、酒田市の病院改築外部委員会と県が調査委託した監査法人がそれぞれ提言した、一般地方独立行政法人化(非公務員型)の可能性を探ることになりそうだ。
医師や診療科など医療機能の集約化については、両病院に医師を派遣している山形大医学部をはじめ、地元医師会、庄内地域の医療機関などの医療関係者を交えた協議の場を別に設け、専門的な見地から練り上げていく考え。
県は、監査法人による県立病院事業分析評価調査の報告を踏まえる形で、県として県民への医療提供の基本的な考え方と将来展望を示した「本県の医療提供体制の基本方向」をまとめた。この中で、庄内地域の今後の展開方向について、日本海病院への医療機能の集約化を想定したうえで、同病院が重篤な救命患者への医療を担うための3次救急機能の整備を明示した。同病院の3次救急は「庄内全域と最上2次医療圏のある程度の範囲をカバーする」としている。
さらに、鶴岡市と三川町の「南庄内地区」では、地区内で基本的に医療が完結できるよう荘内病院の診療体制を充実・確保するとしており、先月に厚生労働大臣から指定された日本海病院と同様に、荘内病院も「地域がん診療連携拠点病院」として整備を目指すことを示した。「基本方向」は、医療制度改革を受け、来年度に策定する新たな県の保健医療計画に反映させる。
統合再編で県と市が合意した県立日本海病院(上)と市立酒田病院