2007年(平成19年) 5月17日(木)付紙面より
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「船箪笥(だんす)は水に落ちても浮き、中に入れたものがぬれない」。そんな伝説を検証する実験が19日、酒田まつりのプレイベントとして酒田市の山居倉庫わきの新井田川で行われる。船箪笥の「日本三大産地」に数えられている同市の職人らが、伝統技術の確かさをアピールしようと企画したもの。ぶっつけ本番の一発勝負で100万円相当の新品の船箪笥を川に投げ入れる。
船箪笥は江戸から大正期にかけ、北前船の船頭らが船内で金庫として使っていたもので、中には船の鑑札や往来手形、船荷の売買の帳簿類、現金、印鑑などを入れていた。
構造は、気密性と吸湿性の高いキリを、頑丈なケヤキを張り合わせて覆い、さらにその外側は鉄製の帯などの金具で保護したもの。頑丈なので船が傾き壁などに衝突しても壊れにくい。また、船が難破しても、船箪笥は浮き、中のものはまったくぬれていなかったという伝説がある。
酒田は、北前船の拠点だった上、指し物工芸が盛んという背景もあり、福井県の三国、新潟県の佐渡・小木とともに日本三大産地に数えられている。しかし、近年は職人が減り、指し物、金具、塗りの3工程のうち、すでに金具は地元では作れなくなり、山形市内の鍛冶屋に頼んで調達。伝統技術は存亡の危機に立たされている。
今回の実験はそうした状況の中、酒田市内の船箪笥の職人らで戦後間もないころに結成した勉強会「酒田木工同好会」(今野繁会長、会員18人)が中心になって企画した。伝統技術をアピールし、後継者育成につながればとの願いを込めたもの。
川に投げ入れる船箪笥は、会員の木材・家具製造販売、富樫葉士さん(63)=鶴岡市上藤島=方で製作中。幅約55センチ、高さ約45センチ、奥行き約40センチで、重さ約40キロ、価格は100万円程度という。
富樫さんによると、ケヤキは生木では水に沈み、十分に乾燥させたものでも辛うじて浮く程度。今回の箪笥は金具だけでも重さ7キロほどあるため、気密性の高さが「浮沈のかぎ」を握るという。
実験は19日午後4時ごろから行う。船箪笥の中に帳面や現金などを入れ、ロープで縛った上、船から川に投げ入れる。30分ほどしたら引き揚げ、中のものがぬれていないか確かめる。
富樫さんは「だれもやったことがないので、本当に浮くかは分からないが、酒田船箪笥のPRになれば。成功したら、箪笥は『実験済み』としてプレミア付きで売りたい」と笑顔で話している。
実験で使う現物の船箪笥。ずっしりと重いが、果たして浮くのか