2008年(平成20年) 1月5日(土)付紙面より
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遊佐町吹浦の女鹿集落で3日夕から夜半にかけ、奇習「アマハゲ」が繰り広げられた。鬼のような面をかぶり、ケンダンと呼ばれるわらの蓑(みの)をまとったアマハゲが「アー、アー」と奇声を上げながら集落内の家々を回った。
アマハゲは、吹浦地区のうち「浦通り」と呼ばれる秋田県境に近い滝ノ浦、女鹿、鳥崎の海岸沿い3集落に残る新年行事。冬の間、何もしないでこたつに入ってばかりいると、足にできる赤い斑点「あまげ」をはぎとる意味の「あまげはぎ」が転じたものとされ、怠け心を戒め、勤労を促す風習とされる。
秋田県男鹿市などに伝わる「ナマハゲ」と同系統とされているが、アマハゲは包丁を持たず言葉も発しない。3集落ともほぼ同様の形態で受け継がれ、1984年に「遊佐の小正月行事」の一つとして国の重要無形民俗文化財に指定された。毎年、元日に滝ノ浦、3日に女鹿、6日に鳥崎で行われる。
3日は女鹿集落の若衆ら7人が参加。太鼓を担当した若衆代表の堀精一さん(40)を除く6人が「赤鬼」「青鬼」「赤じんじ」「黒じんじ」「がんぐつ」と呼ばれる漆塗りの面5種を交代でかぶり、アマハゲにふんした。
玄関先で「ドーン、ドーン」と勢いよく太鼓が打ち鳴らされると、「アー、アー」と奇声を発しながらアマハゲが一斉に家の中に。怖さのあまり泣き叫んだり、両親やおじいちゃん、おばあちゃんにしがみつき離れない子供たちもいた。
暴れたアマハゲのケンダンから落ちたわらくず「コモジ」は掃き集められ、家内安全や無病息災を願う縁起物として床の間に一晩飾られた。以前は翌朝のたき付けにし願を掛けたという。
この日は雪こそないものの、海から強風が吹き付ける中、約30戸を3時間ほどかけ回ったアマハゲは、家々で進められたお神酒で、終わるころは千鳥足になっていた。
アマハゲに抱えられ子供たちは怖さのあまり泣き出した=3日、女鹿集落