2008年(平成20年) 1月11日(金)付紙面より
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鶴岡市は9日、鶴岡公園内に整備を予定する「藤沢周平記念館」(仮称)の基本設計を発表した。藤沢文学や鶴岡の風土に通じる「外見は質素で堅実、中は思いがけないほど豊かで充実した世界」を基本理念とし、鶴岡公園の環境の中に静かにたたずむ、品格ある施設とする。開館は2009年中を目指す。
記念館は、藤沢周平氏の業績と貴重な文学資料を後世に伝えることを主眼に置くとともに、「藤沢文学」の源である鶴岡・庄内の文化・風土の中で、藤沢文学と風土性を探求する拠点施設。
計画によると、記念館は公園内の市郷土資料館跡地に建設する。敷地面積は約1720平方メートル、鉄筋コンクリート・鉄骨造り2階建てで延べ床面積は約918平方メートル。展示室と収蔵庫のほか、事務室、展示準備室、サロンなどを備える。
1階の展示室(約200平方メートル)と2階の収蔵庫(約178平方メートル)については、遺品・原稿、創作資料など貴重な資料の保全を重視。土蔵を置屋根や二重の外壁で保護する庄内地方特有の「鞘堂」(蔵)の知恵を生かした手法を採用し、蔵との間に空気の層をつくることで、温度や湿度を管理しやすくする一方、防火性能を高める。
また、緑豊かな公園内の環境に一体となって溶け込むよう、外壁や屋根部分には地元産木材を多く利用する。
設計は、建築家で東北公益文科大大学院教授の高谷時彦氏が担当。技術提案によるプロポーザル方式とし、原案をもとに、有識者などによる開設準備委員会と市が協議を重ねてきた。
一方、展示内容は、常設展示を「藤沢文学 海坂と鶴岡・庄内」(1部)、「藤沢文学のすべて」(2部)、「作家・藤沢周平の軌跡」(3部)で構成する。
1部では、作品の原風景と根底にある土壌を探るため、ふるさとを描いた作品と自然文化風土を映像などで紹介。“海坂もの”の作品舞台とされる江戸時代の鶴岡・庄内を資料で紹介する。
2部では、直筆原稿のほか創作メモなど周辺資料を展示。作品が生み出される過程と全作品を系譜で紹介。実際に使用した机や書などを配置した「書斎」を再現する。
3部では、デビュー前の創作活動、病気療養時代、業界紙記者時代などについて、エッセー作品の中で自らが語る言葉を通して、人間・作家藤沢周平を育んだ土壌を考察する。
一方、企画展示では個々の作品を中心に、常設展示だけでは表現しきれない「藤沢文学」の奥深さ、魅力を紹介する。
市教育委員会によると、今年3月までに市郷土資料館を解体して本体工事に着手。09年6月の完成、同年中のオープンを目指している。
基本設計で示された「藤沢周平記念館」(仮称)の外観イメージ図