2008年(平成20年) 1月13日(日)付紙面より
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鶴岡市の出羽三山神社(緒方久信宮司)の三神合祭殿防災工事が完了した。合祭殿のかやぶき屋根を火災から守る散水設備や、積雪対策として高さ約2・7メートルの高位置から消火ができる放水銃などを設置、貴重な文化遺産の継承を図る。
同神社の本社は1796(寛政8)年と1811(文化8)年の2回にわたり火災で焼失。現在の合祭殿は1818(文政元)年に完成したもので、当時動員された大工は3万5000人余に達したという。羽黒派古修験道独自の造りで、建設当時は赤松脂塗だったが1970―72年にかけ開山1380年祈念奉賛事業の一環で塗り替え修復工事が行われ、現在の姿となった。2000年に国の重要文化財に指定された。
防災工事は、日本最大とも言える貴重なかやぶき屋根の保全と後世への継承を大きな課題とし、文化庁や県、鶴岡市の補助を受けて2004年7月から4カ年計画で実施された。
主な設備として▽参集殿でのボタン操作により、かやぶき屋根を火の手から守る散水設備▽積雪対策として4基の地上ギア式高位置放水銃▽1人で操作が可能な易操作型の屋内消火栓2基▽停電時のリスクを考慮したディーゼルエンジン式の消火用加圧ポンプ▽消防隊が使用するサイズと同じ65ミリ口径の地上テコ式放水銃1基―など。いずれも景観を損なわないように色調・デザインまで配慮している。
このほか、五重塔付近の2本の杉木に取り付けられた避雷針が改修された。昨年末にすべての工事が完了した。総事業費は1億7056万円。
同神社では「国や県、市など関係機関の協力で防災体制を整えることができた。貴重な文化遺産を後世に伝えるため、不測の事態にもしっかりと対応できるように日ごろから注意をしたい」と話していた。
積雪対策として高位置放水銃4基を設置=山形空調提供