文字サイズ変更



  • プリント用表示
  • 通常画面表示

荘内日報ニュース


日付の新しい記事へページを移動する日付の古い記事へ
  • ニューストップ
  • 最新記事
  • 戻る

2008年(平成20年) 10月11日(土)付紙面より

ツイート

森の時間 9 ―山形大学農学部からみなさんへ―

スタンダード10から始める「森林文化」論

 山形大学の農学部はフィールドサイエンス(野外科学)を教育の柱にしています。私も演習林(正式名称はフィールド科学研究センター上名川演習林)を利用して2泊3日の実習を担当しています。最初のメニューは樹木の名前を覚えることです。ただし、2泊3日ですべての樹種を網羅するのはさすがに無理。100種は覚えてほしいところですが、それも難しいので思い切って主要な30樹種に絞っています。「スタンダード30」と名付けて、これだけは確実に覚えることが目標です。

 初日は標本をじっくり眺め、葉の形や芽の付き方を観察します。先輩がクイズを出したりして夜まで特訓が続きます。翌日は森を歩きながら、実物に触れて覚えます。下流の宿舎から山の頂上までを半日かけて踏査する行程です。ヒトの顔がおのおの異なるように、同じ樹種でも個性があるので、個々の違いを超えた共通の特徴を把握しなければならず、初めての学生にはこれがなかなか手強いようです。それでも山頂に着くころには、なんとか急ごしらえの「野外科学者」ができあがります。午後にはその技能をもって最初の本格的な植生調査に臨むのです。

 下山のころには何人かの学生たちにちょっとした精神革命が起きます。名前を知らずに歩いた午前の森と、種名を識別できてから歩く午後の森では見える世界が全く異なるのです。それまでただ緑にしか見えなかった森が、一本一本の個性的な輝きに満ちてきます。やがて、森に対する注意力が格段に増す者が出てきます。同じ森でも見る側の意識で見え方ががらりと変わるコペルニクス的転回。かつて同じ経験をした私は、できるだけ多くの学生に世界が変わる瞬間を自覚してもらいたいのです。森歩きは樹の名を知らなくても楽しめますが、名前が分かるとそれが倍増するのは間違いありません。皆さんも少しずつ覚え始めてみませんか? 今日はナラ、来週はブナというように…。そう、少しずつの方が、かえって良いかもしれません。森はそのたびに、姿を変えてあなたを迎えるからです。

 鶴岡市は「森林文化都市」を標榜しています。とはいえ、あまり難しく考えるより「樹の名前を知っている人口密度がとても高い街」を目指すことから始めるのも良いかもしれません。まずは「市民のスタンダード10」から始めるのはどうでしょう。「これは良いことを考えついたぞ」とひそかに心が躍りました。ところが、どの10種が良いかと学生たちと数えあげ始めたら、これが思いのほか悩ましい。「ブナを外すわけにはいかない。ナラもそうだ。だとすればホオノキやカエデも必ずあるよなぁ」。「私が研究しているクルミを外さないでください!」、「スギだって大事ですよ」、「海岸ならばクロマツやタブノキが…」あっという間に10種では収まらなくなるのです。私にとってブナが特別であるように、人それぞれに特別な樹とそれにまつわる物語があります。私が勝手に考えるよりも、むしろみんなでお気に入りの樹を披露しあい、熱く議論しながらスタンダード10を絞っていく過程こそが森林文化への近道ではないでしょうか。

(山形大学農学部准教授、専門はブナ林をはじめとする生態学)

 マイスタンダード10の1/鳥海山のブナ=2004年5月28日、自然写真家・齋藤政広撮影
 マイスタンダード10の1/鳥海山のブナ=2004年5月28日、自然写真家・齋藤政広撮影


2008年(平成20年) 10月11日(土)付紙面より

ツイート

山の幸 満載 森の産直カー発進 鶴岡

 鶴岡市の朝日、温海両地域の農林産物を軽トラックで集荷して市街地で直売する「森の産直カー」の運行が9日、本格的にスタートした。「あさひ号」「あつみ号」の2台の産直カーが市街地の住民に、キノコや赤カブなど新鮮な山の幸を届けた。

 国が本年度創設した「地方の元気再生事業」の採択を受け、市と民間団体などで組織した「つるおか森のキャンパス推進協議会」が補助金を活用し社会実験事業として2年間運行する。中山間地域の所得向上と市街地のにぎわいづくりを目指す。距離的な問題などで産直施設への出荷をあきらめていた農家を産直カーで巡回して集荷するほか、産直施設に入荷された産物を販売。将来は行政の手を離れ産直組合などによる自主運営も構想する。

 この日は、あさひ号が到着した長者町西公園で、産直カーの運行開始式が行われ、近くの住民ら約50人が集まった。同協議会長の佐藤正明副市長は「朝日と温海の新鮮な産物を定期的に街に届ける。末永く運行を続けたい」とあいさつした。

 同公園では、朝採りの天然キノコ、ヤマブドウ、アケビ、野菜類をはじめ、干しゼンマイ、豆腐や油揚げ、とちもちなどの加工品が並んだ。中には1キロ4000円の天然マイタケも。足を運んだ住民たちは、キノコの調理法を聞くなどしてさまざまな産物を購入。70代の女性は「朝日の産直まではなかなか行けない。次は何の山の恵みが届くかと楽しみ」と話していた。

 あさひ号は月、水、木曜、あつみ号は火、木、金曜に運行され、週末は各種イベントに出張参加する。冬場は塩蔵ものなどの加工品や促成栽培の山菜が中心になるという。

産直カー「あさひ号」が運んできた山の幸を買い求める住民たち=鶴岡市の長者町西公園
産直カー「あさひ号」が運んできた山の幸を買い求める住民たち=鶴岡市の長者町西公園


2008年(平成20年) 10月11日(土)付紙面より

ツイート

“ノーベル賞効果”期待!! オワンクラゲに問い合わせ殺到 加茂水族館

 米国ボストン大学名誉教授の下村脩氏(米マサチューセッツ州在住)のノーベル化学賞受賞が大きな話題となる中、受賞のきっかけとなった「オワンクラゲ」を展示している鶴岡市立加茂水族館(村上龍男館長)に、中央のマスコミなどから問い合わせが殺到している。オワンクラゲは全国でも展示している施設が少ないためで、クラゲの展示数「世界一」を誇る同館としては面目躍如の形となった。同館では「これを機会に大勢の人から足を運んでもらいたい」と“ノーベル賞効果”に期待を寄せている。

 オワンクラゲは軟クラゲ目オワンクラゲ科。おわんを逆さにしたような形が特徴で、かさの直径は最大20センチになる。主に春から夏にかけて日本各地の沿岸で見られ、大きな口で小型のクラゲや小魚を丸のみする。庄内浜では3―6月に見られる。

 今回の下村氏の受賞はオワンクラゲから緑色蛍光タンパク質(GFP)を発見したのが大きな功績とされた。下村氏の受賞が決まった8日夕ごろから、加茂水族館にはマスコミを中心に、オワンクラゲに関する問い合わせが殺到。村上館長は「この時期、オワンクラゲを展示しているのは全国でもここと下関の水族館ぐらい。資料用映像が少なかったのでは」とみる。

 同館では数年前にオワンクラゲの繁殖に成功しており、飼育数は多いときで幼生を含めて100個体を超える。現在では安定した数を常設展示している。村上館長は「40種類を展示している『クラゲの展示数世界一の水族館』の面目躍如といったところ」と話す。

 今後、オワンクラゲが注目される可能性を踏まえ、同館では9日朝、それまで展示していた小型の水槽(直径35センチ、奥行き9センチ)から、中型(直径60センチ、奥行き30センチ)に移し替え、展示数も5匹から10匹に増やした。かさの直径1センチ弱―約4センチ程度のクラゲが流水の中で漂う姿を見られる。水槽上部に設置したボードも、生態を解説する文章からGFPの説明をメーンにしたものに付け替えた。

 村上館長は「現在展示しているオワンクラゲはすべて水族館内で繁殖させたもの。苦心して研究し、努力を積み重ねてきたから今がある。下村氏のノーベル賞受賞をきっかけに、クラゲが注目されるのならこれほどうれしいことはない」と話していた。

加茂水族館のオワンクラゲ。ノーベル賞で注目度アップ=9日
加茂水族館のオワンクラゲ。ノーベル賞で注目度アップ=9日



日付の新しい記事へページを移動する日付の古い記事へ

記事の検索

■ 発行月による検索
年  月 

※年・月を指定し移動ボタンをクリックしてください。
※2005年4月分より検索可能です。

 
■ キーワードによる検索
   

※お探しのキーワードを入力し「検索」ボタンをクリックしてください。
※複数のキーワードを指定する場合は半角スペースを空けてください。

  • ニューストップ
  • 最新記事
  • 戻る
ページの先頭へ

Loading news. please wait...

株式会社 荘内日報社   本社:〒997-0035 山形県鶴岡市馬場町8-29  (私書箱専用〒997-8691) TEL 0235-22-1480
System construction by S-Field