2009年(平成21年) 7月12日(日)付紙面より
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日本政策投資銀行設備投資研究所長で東北公益文科大客員教授の花崎正晴さんの講演会が10日、酒田市公益研修センター(公益ホール)で開かれた=写真。
公益大大学院(鶴岡市)の修士課程に今春、「応用統計・政策研究領域」が新たに設置されたのを記念した公開講義の4回目。
花崎さんは1979年、早稲田大政経学部卒業後、日本開発銀行に入行。2003年に同研究所副所長となり、07年10月から同所長を務めている。専門は企業金融、コーポレート・ガバナンス(企業統治)。
この日は「アメリカ発の金融危機と金融機関の課題」と題して講義。サブプライムローン問題に端を発する今回の金融危機が発生した原因や、投資銀行が経営破たんした理由、それらを教訓に日本の金融機関に求められるものなどを解説した。
はじめに、世界規模での金融市場が実態経済に比べて拡大し、アメリカでは全企業の利益に占める金融業の利益が80年には約1割だったものが、クレジット市場の急拡大によって07年には約4割まで膨らんだことを紹介。「バブル崩壊で、それは単なるマネーゲームの結果と分かった」と話した。また、80年代後半からシティグループなどアメリカの有力商業銀行が投資銀行業務に進出したものの、金融危機で多額の損失を負い、大規模なリストラを迫られていると説明。
一方のゴールドマン・サックスやメリルリンチなど有力投資銀行は、本来的業務である顧客企業の資金調達サポートや手数料収入から、裁定目的の金融商品投資仲介や短期資金に依存した実質的な自己投資などに収入構造が変化したことが、経営破たんにつながったとした。
日本の金融機関に求められるものとしては▽顧客企業の信頼や評判の形成▽顧客企業の価値向上のための資産調達支援―など「長期的視野」に立った業務や、▽格付け会社の情報ではない自社による長期的情報の蓄積▽企業または事業主体サイドに立脚した調査▽金融機関同士、自治体等との連携―などによる「情報生産の内製化」を挙げた。
さらにフロアからの質問に答え、「世界的な不況から抜け出すには早くアメリカ経済が立ち直り、アジア経済もさらに良くなる必要があるが、当面は深刻な状況が続くのでは」との認識を示した。