2009年(平成21年) 8月9日(日)付紙面より
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藤沢周平さんの短編小説を原作に、鶴岡市などでロケを行った映画「花のあと」(東映配給)のPRを兼ね、中西健二監督や東映の関係者が7日、県庁を訪れ、吉村美栄子知事に対して映画とともに山形県を全国に発信していくことなどを説明し、県に協力を依頼した。今年11月に庄内地方で先行完成披露試写会を行った後、来年2月末か3月上旬から全国公開を予定している。
「花のあと」は、女でありながら男顔負けの剣術の腕を持つ以登(いと)を主人公に、青年剣士・江口孫四郎との淡い恋を織り交ぜながら、藩の重鎮の策略で自決する孫四郎への「義」を尽くすため、ひたむきに生きるヒロインの姿を描いた。藤沢作品を原作にした映画は6作目。
主役の以登は、今最も注目されている若手女優で時代劇初挑戦となる北川景子が演じる。孫四郎にはバレエ界の期待の新星・宮尾俊太郎、以登の許婚(いいなずけ)・片桐才助には甲本雅裕、以登の父を國村隼、孫四郎を罠(わなに陥れる藩の重鎮・藤井勘解由を歌舞伎俳優の市川亀治郎が演じる。映画「青い鳥」でデビューした中西監督は、これが2作目のメガホンで初の時代劇。
昨年秋から庄内地方などで風景撮影などを経て今年3月末にクランクイン。鶴岡ロケは4月10日からスタートし、鶴岡公園では映画の冒頭やラストシーン、玉川寺では以登らが茶道を習うシーン、藩校・致道館では武家の財政を預かる奏者見習いとなる孫四郎が詰め所で上官らに教えを受けるシーンなどが撮影された。このほか、茨城県御殿場町や長野県、静岡県、都内のスタジオなどで撮影し4月末にクランクアップした。
吉村知事と面談した中西監督は「2本目で素晴らしい作品を撮らせてもらい名誉なこと。藤沢作品を映像化できるか不安だったが、スタッフ、出演者などの協力で精いっぱいできることをやった」と撮影を振り返り、「主人公の以登が持つ、たおやかさと凛(りん)とした独立心は藤沢作品の女性の魅力。そうしたものを失った今の人たちに作品を通して伝えたい。主演の北川さんは以登にぴったりで、すごくいい作品となった」と見どころを紹介した。
また、鶴岡ロケにも触れ、「天候が不順で地元エキストラの人には何回も足を運んでもらいご苦労かけたが、嫌な顔も見せず一生懸命やってもらいありがたかった」と感謝した。
吉村知事は「藤沢作品は大好きで、ぜひ映画も見させていただきたい。山形はずいぶん前から映画文化をはぐくんできた。協力させていただきたい」と述べた。県商工労働観光部では「ロケ地山形県」などと記された宣伝用ポスターの掲示など、本県をアピールできる連携宣伝策などを検討していく。
吉村知事(右)に映画「花のあと」の見どころなどをPRする中西監督