2009年(平成21年) 8月22日(土)付紙面より
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酒田市松山地域に伝わる「松山能」(県指定無形民俗文化財)が20日夜、同地域の神明神社境内の能楽堂で厳かに奉納上演され、観客を幽玄の世界に引き込んだ。
松山能は江戸勤番の松山藩士が習得し、明治維新後は地元の民間演能団体「松諷社(しょうふうしゃ)」(松本允夫会長)に受け継がれて続いている。松山藩創立期の祈願所だった神明神社の例祭(8月20日)に合わせた上演は「月の能」とも称され、「花の能」として6月に開催される「羽州庄内薪能」、1月末に「雪の能」として開かれる「まつやま大寒能」とともに3定期公演の一つ。
今年の演目は、鬼など恐ろしい化生をシテ(演者の中心)にした「五番目物」の一つ「羅生門」。源頼光の家来で猛将と名高い渡邊綱(わたなべのつな)は、京都の羅生門に鬼が出るといううわさをめぐって頼光の客将と論争になり、よろいかぶとに身を固めて検証に向かう。激しい風雨の中、訪れたという印の札を立てて帰ろうとすると鬼神が現れかぶとをつかむ。綱はひるまずに太刀を抜いて応戦し、鬼神の片腕を切り落とすと、鬼神は黒雲の中に消えていく。
同夜は、真夏日となった日中の熱気が残って蒸し暑い中、各地から訪れた能楽ファンが目前で繰り広げられる幽玄の世界を堪能。また、アマチュアカメラマンが陣取り、クライマックスの綱と鬼神の立ち回りシーンなどでは盛んにシャッターを切っていた。
能に先立ち、松山小学校狂言クラブの子供狂言「盆山(ぼんさん)」と、松諷社による狂言「蝸牛(かたつむり)」が演じられ、観客の笑いを誘った。
鬼神(左)と渡邊綱(右)が立ち回りを演じ舞台は最高潮を迎えた