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2010年(平成22年) 2月4日(木)付紙面より

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庄内浜のあば 悲哀と快活と歴史と ―41―

縁は神様が結んでくれる

くじは3回引く

 わらのくじを引いて生涯の義理の姉妹となる、鶴岡市大岩川の「ケヤキ姉妹」。縁結びの方法は次のようにして行われる。

 儀式は学校が休みになった後の12月28日ごろになるのが一般的だ。地区の産土様(おぶっなさま)・大坂神社に集まった子供たちが、二つ折りにしたわらの端をつかんで引き、同じわらの両端を持っていた者同士がケヤキ姉妹になる。この儀式のしきたりと手順を教え、くじを準備するのは前回儀式を経験している先輩だ。

 くじは最初の2回は練習で3回目が本番。「ケヤキ姉妹は神様が結んでくれるものだから」と、昔は1回のくじで決まったが、いつのころからか3回になった。相性が合う合わないはどうしようもなく、同地区の五十嵐加代子さん(58)は、自身の体験を次のように話す。「祖母、母と代々ケヤキ姉妹の契りを結ぶしきたりの家庭の中で育ってきたので、自分もその年代になれば自立に向けて“ケヤク”(契約)を結ぶものだと、何の疑問も持たずにいた。それでも、子供心に好き嫌いや相性があって『この人とは一緒になりたくない』という相手はいます。だから、本当は3回のくじで決めるところを、私たちの時は人数(組)も多かったので気の合った者同士が結ばれるようにと、5回か6回引いた記憶がある」と話す。

同宿で正月迎える

 神社で引いたくじは互いに手から離さずに持ち、小国川の河口に行って海に流す。交わした契りが生涯変わることがないことを願ってわらを海に流し、その後は後ろを振り向かずに神社に戻る。

 ケヤキ姉妹になった者は、大みそかに一軒の家に集まり、同じ部屋で、姉妹は一つの布団で寝る。寝る前に持ち寄った丸もちを交換して食べ、その後は元日の昼まで何も食べない。断食に似たしきたりを乗り越え、同じ床で寝ることで、一心同体の絆(きずな)を強くし、生涯の姉妹となる。元日の朝は大坂神社にお参りしてお払いを受ける。

 ケヤキ姉妹は特に姉と妹を区別しないが、年上が年下の面倒を見るようになるケースが多いようだ。

義理の姉妹は特異

 義理の兄弟・姉妹について『兄弟分の民俗』(竹田旦著)では、大岩川のケヤキ姉妹は全国的にもあまり見られない風俗・習慣だと記している。その特異性としてケヤキ姉妹を決める手段のくじ引きを挙げ、〈姉妹選定にくじを採用したのは、双方の家柄・貧富など「家」の格や、美醜・賢愚などで個人を差別せず、公平を期そうとしたための発想である。くじで組み合わされた当人たちこそもっともふさわしいカップルであり、「神様が結んでくれたもの」と考えればいい〉、と。

 さらに同書は義理の兄弟・姉妹の結び付きの風俗には、ケヤキ姉妹のような「一対・個人型」▽つながりの関係が家族まで広がる「一対・家族型」▽家全体の結び付きになる「一対・家型」▽一対一の契約ではなく、3人以上が同時に契りを結ぶ「集団・友人型」―があると述べ、その多くが男の義兄弟であるのに、女性だけで縁結びをしている大岩川の風習の特異性は大きい指摘している。

(論説委員・粕谷昭二)

同じ宿で大みそかを過ごし、絆を深めるケヤキ姉妹(平成11年・矢口茂市さん提供)(左) 元旦、晴れ着姿で産土様にお参りし、お払いをしてもらう
同じ宿で大みそかを過ごし、絆を深めるケヤキ姉妹(平成11年・矢口茂市さん提供)(左) 元旦、晴れ着姿で産土様にお参りし、お払いをしてもらう



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