2010年(平成22年) 3月9日(火)付紙面より
ツイート
鶴岡市小国地区に伝わる伝統行事「小国八幡宮弓射(ゆみいれ)神事」(市指定無形民俗文化財)が7日、同地区の小国ふれあい村(旧小国小学校)の特設会場で行われた。寒さが残る山間で、裃(かみしも)姿の若者たちが古式ゆかしく弓引きの神事を繰り広げた。
弓射神事は、五穀豊穣や厄よけを祈願する小正月行事として、440年余りの歴史を持つと伝えられている。戦時中に一度途絶えたが、1958年に小国八幡宮弓射神事保存会が結成され復活。現在は3年に1回、3月の第1日曜日に行われている。
矢を的に当てることよりも射る前後の礼儀作法を重んじており、一般的な弓道のように口元からではなく胸元から矢を放つのが特徴。独特の作法から「小笠原古流」か「日置(へき)流」の流れをくんでいるとみられている。
この日は午前8時45分ごろ、八幡宮の神主にあたる宮守(みやもり)・五十嵐和一さん方から裃姿の射手ら約20人が「渡御(とご)行列」に出発。弓や供え物などを手に、会場まで約500メートルをゆっくりと練り歩き、ご神体を会場に移した。
同10時すぎに弓儀式が開始。はじめに11人の射手が「振り役」と呼ばれる選者に矢を預け、後ろ手で矢を1本ずつ取り出して弓を引く順番を決める「矢代(やだい)振り」が行われた。
射手は先に矢を放つ「甲矢立(はやだち)」6人と、続く「乙矢立(おとやだち)」5人の二組に分けられ、「丁見(ちょうみ)的」として約27メートル先に設置された1尺2寸(約35センチ)の的目掛けて試し打ち。
続いて、本番の「奉射(ほうしゃ)的」が行われ、片肌脱いだ射手たちが作法に気を配りながら5尺2寸(約160センチ)の大的や、四半(約40センチ)や四寸(約20センチ)などの小的を狙い、次々と矢を放った。射手が見事に的へ命中させ、烏帽子(えぼし)姿の「采振(さいふり)役」が「あたーりー」と唱えると、神事を見守っていた見物客からは大きなどよめきと拍手が起こり、「頑張れ」「格好いいぞ」と声援が飛んでいた。