2012年(平成24年) 2月8日(水)付紙面より
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鶴岡一中2年の岡部寛大(かんた)君(14)と弟で朝暘六小6年の怜央(れお)君(12)=鶴岡市みどり町=の兄弟が、日本将棋連盟(東京都渋谷区)のプロ棋士養成機関「新進棋士奨励会」に入会し研さんを積んでいる。県内から同奨励会に入会したのは、酒田市出身の阿部健治郎五段以来9年ぶり。鶴岡からは、戦後間もないころに活躍した故北楯修哉九段以来のプロ棋士誕生に、周囲の期待が高まっている。
奨励会入会試験は昨年8月下旬に行われた。受験するには「日本将棋連盟主催の全国大会でベスト4」などの条件がある。寛大君は第32回全国中学生選抜将棋選手権大会(昨年8月)で3位、怜央君は第36回小学生将棋名人戦決勝大会(同)で2位になり受験条件をクリアした。
合格には▽受験者同士で対局し4勝する▽奨励会員と対局し1勝する―などの条件があるが、2人は見事試験を突破し合格を果たした。このときは60人が受験し、合格は19人という狭き門だった。
2人は翌9月から月2回の例会に合わせ、兄弟だけで夜行バスや電車を乗り継ぎ、将棋会館(東京都渋谷区)に通っている。プロを目指す同年代の子どもたちと対局を重ね、半年間で最大36回戦う。その中で規定以上の勝利数を収めると昇級できる。
寛大君は小学3年から、怜央君は小学1年から将棋を始め、今では全国トップクラスの成績を収めている。入会前の心境について、寛大君は「今まで対局したことがない人もいたので不安だった」、怜央君は「全国大会で結果を出していたのでどこまで進めるか楽しみだった」と話す。
入会から約4カ月がたち「全員が互角の戦いで最後まで勝敗が分からない」(寛大君)、「上の級の人は読みが深い。感想戦で自分が気付かなかった手を教えてもらえる」(怜央君)と、あらためて周囲のレベルの高さを感じている。
より腕を磨くため、奨励会での対局に加え、師匠の加瀬純一六段らが千葉県内で運営する将棋教室にも通い、師匠から指導を受けるほか、兄弟子や愛好家らと対局を重ねている。
奨励会は6級から三段までの人が在籍し、四段以上でプロ棋士と認定される。特例を除き21歳までに初段、26歳までに四段に昇段できなければ強制退会となる。
厳しい世界に身を置く2人だが、目指す道は同じ。寛大君は「早くプロになっていろんな人と対局したい」、怜央君は「タイトルが取れるように頑張りたい」と力強く目標を語る。
日本将棋連盟鶴岡支部の上野伸一幹事長(59)は2人の強さの秘訣(ひけつ)について「庄内だけでなく県外の大会にも積極的に参加し、そこで同年代の子どもや大人たちと対局したことが刺激になっていると思う。一回一回の対局を大切にして、目の前の壁を少しずつ乗り越えていった」と話す。
母親の裕香さん(45)は「2人そろって合格すると思っていなかったので驚いている。地元ではプロ棋士から学べる機会が少ない中、時間があれば2人で将棋を打つなど、お互い切磋琢磨(せっさたくま)している。毎回東京に通うのは大変だが、家族や周囲のみんなも応援しているので頑張ってほしい」と話している。