2012年(平成24年) 2月16日(木)付紙面より
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酒田市黒森地区に伝わる農民芸能・黒森歌舞伎の正月公演が15日、同地区の日枝神社常設演舞場で奉納上演された。今年の本狂言は「奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)」。黒森小学校男子児童による少年歌舞伎も上演され、市内外から訪れた見物客は伝統芸能と子供たちの愛らしい演技を満喫した。
黒森歌舞伎は江戸時代中期の享保年間(1716―35年)から地区民によって連綿と受け継がれてきた農民芸能。盗賊が村に入り、村人の生活がすさんでいくのに心を痛めた村人が、勧善懲悪の思想を普及させるために若衆に芝居を演じさせたのが始まりとされる。
寒さの厳しい毎年2月中旬に上演されることから「雪中芝居」とも呼ばれる。1997年には文化財保護法に基づく「記録作成などの措置を講ずべき国選択無形民俗文化財」に選ばれた。
今年の本狂言「奥州安達原」は近松半二の時代狂言で、正月公演としては96年以来、16年ぶりの上演。平安時代中期、源頼義と戦った陸奥の安倍一族が起こした反乱「前九年の役」を題材に、親子、兄弟の別れなどを叙情的に描いた作品。「文治住家(ぶんじすみか)の場」「袖萩祭文(そではぎさいもん)の場」を上演した。
少年歌舞伎は「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)」の中の一幕「稲瀬川勢揃いの場」。盗賊5人が橋の上で自己紹介し合う、おなじみの「白浪五人男」を堂々と演じた。
この日は朝方までの雨も上がり、時折青空ものぞく天気になった。見物客たちは客席で弁当を広げ、酒を酌み交わしながら役者が口上を述べたり、見えを切るシーンでは拍手を送ったり、シャッターを盛んに切っていた。
今月17日も正午から同じ出し物が上演されるほか、3月4日には同市の希望ホールで酒田公演が行われる。