2012年(平成24年) 10月10日(水)付紙面より
ツイート
「つや姫」誕生の地である鶴岡市藤島地域で7日、つや姫収穫体験ツアー「新米つや姫食べてみ隊」が開かれ、市内の老若男女が稲刈りや新米の「つや姫」を使った昼食などを楽しんだ。
「つや姫」は同地域内にある県農業総合研究センター水田農業試験場で育種された。ツアーは、地域住民による「つや姫誕生のまち活性化の会」(通称・つや姫会、田中壽一会長)が昨年から始め、今年で2回目。会員と一般、合わせて17人が参加した。
参加者ははじめ、水田農業試験場を見学し、職員から「つや姫」が育種された経緯などを聞いた。続いて、同市小中島のつや姫会会員、石川均さんのほ場で、「つや姫」約1・5アールを鎌で手刈りした。ベテラン農家の会員が8株ずつを1束にし、稲わら数本で手際よく縛っていく様子に、「教えてください」と、技を覚えるまで熱心に取り組む若い女性もいた。
柴田真紗子さん(33)=同市鳥居町、アルバイト=は「つや姫が藤島で生まれたというのは初めて知った。こういう過程を経て米ができることをあらためて知り、感激。つや姫はおいしく、あとでもらえるのも楽しみ」と話した。
2012年(平成24年) 10月10日(水)付紙面より
ツイート
遊佐町の第35回「神鹿角切祭(じんろくつのきりさい)」が8日、鳥海山中腹の国民宿舎「大平山荘」鹿公園前で行われた。秋らしい柔らかな日が差す絶好の行楽日和の中、親子連れらが訪れ、同町の少年議員2人が長く伸びた雄ジカの角を切り落とした。
鹿公園は1977年に標高1000メートルにある同山荘の一角にオープンした。例年、6月初旬から10月末までニホンジカが飼われ、行楽客や登山客の人気を集めている。そばに鳥海山大物忌神社中の口宮が祭ってあることから、同公園の鹿は「神鹿」と呼ばれている。
角切祭は、秋の鳥海山をPRするとともに、発情期を前に、雌ジカや今年春に生まれた子ジカが傷つかないように毎年この時期に開催。鹿の角は御利益があるとされ例年、抽選で当たる角目当てに大勢の行楽客が訪れている。
この日は2頭が対象で、烏帽子(えぼし)と直垂(ひただれ)姿で登場した少年議長の三浦遼太君(遊佐高2年)、少年議員の土門直嗣君(同)が、糸のこで長さ40センチほどまで成長した角を切り落とした。三浦君は「最初はかなり緊張したが、切っているうちに楽しくなった」と話していた。
鹿の角などが当たる抽選会、威勢の良い鳥海太鼓の演奏、芋煮の無料振る舞いも行われ、県内外から訪れた行楽客らは秋の鳥海山を堪能していた。
2012年(平成24年) 10月10日(水)付紙面より
ツイート
緑のダークサイト 小山 浩正
みんなで共有している不可解な定番イメージがあります。ドラマに出てくる不良少女は自分を「あたい」と呼ぶけどそんな娘(こ)に会ったことないし、「ワタシ中国人アルヨ」なんて喋る中国人もいない。同じく、エコグッズや環境団体のロゴには判で押したように緑の双葉が使われます。環境といえば植物、植物といえば緑と言うことで、緑はきれいな自然の代名詞。だから、みんな緑が大好き…でもホント?
確かに、緑への好感度には根拠があるようです。葉から出るヘキセノールは脳をリラックスさせ、樹木が見える病室の患者はコンクリートしか見えないベッドの患者より退院が早いという統計もあります。緑色を見るとアセチルコリンというホルモンが分泌され傷の治りも早いらしい。ならば、身の回りの壁やら服やら建物はもっと緑であふれて良いのに、必ずしもそうなっていないのはなぜでしょう。
実は、緑には逆のイメージもあるのです。特に、文明化以降の欧米では「緑=森」には無意識な不安がつきまとうらしいのです。かつて森は恐ろしい場所でした。街から離れた深い森は迷いやすく、盗賊や狼に襲われるので気軽に行ってはならない所です。ですから、ヘンゼルとグレーテルがさまよう森は不安に満ちた異界として描かれたのです。宗教や政治の軋轢がそれに拍車をかけました。太古のヨーロッパは、ドルイド教という森の精霊を崇めるアミニズムが根付いていたので、新参のキリスト教文明にとってこの土着宗教の制圧は森の殲滅を意味しました。逆に、文明の統治を拒むアナーキストは森に逃げ込み、森を住み処とします。その代表格がロビンフットやウイリアムテル。だから森を連想させる緑も、いつしか恐ろしい敵、不吉で怪しい者、理性が通用しないコントロール不能な事物の象徴になったのです。
権力に弓ひくロビンフットが緑の衣装で描かれるのはそのためです。このイメージは後代にも引き継がれ、ピーターパンやティンカーベルのような理性の外にいる妖精も緑をまといます。フランケンシュタインを筆頭にシュレック、ハルク、ヨーダなど異形のキャラクターも緑(ニコちゃん大王やピッコロ大王も)。ビリヤード、麻雀、ルーレットなど制御しがたいゲームや賭け事のテーブルには緑のフェルトが貼られ、サッカーやゴルフなどの球技は芝生の上でハラハラどきどき。チャドウィック監督の映画『ブーリン家の姉妹』では16世紀の英国に実在した妖女アン・ブーリンが、目の覚めるような緑のドレスで暴君ヘンリー8世を翻弄します。不安な緑が効果的に使われた場面でした。私たちは森を綺麗とか癒やされるとか賞賛するけれど、その心の奥では文明人としての不安が疼いているのかもしれません。確かに一人で森に入ると、原因不明の怖さに苛まれる時はあるのです。美しさと怖さがないまぜの森の中、両方あるからハマるのか。女性と同じだ、気をつけよぉ。
(山形大学農学部教授 専門はブナ林をはじめとする生態学)