2013年(平成25年) 2月17日(日)付紙面より
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酒田市黒森地区に伝わる農民芸能・黒森歌舞伎の正月公演が15日、同地区の日枝神社常設演舞場で奉納上演された。今年の演目は少年歌舞伎、本狂言とも「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」計3幕。地元の黒森小学校男子児童が初めて本狂言に挑戦したほか、大人の役者(妻堂連中)も力強い演技を披露、市内外から訪れた見物客は伝統芸能を満喫した。17日も正午から同じ出し物が上演される。
黒森歌舞伎は江戸時代中期の享保年間(1716―35年)から地区民によって連綿と受け継がれてきた農民芸能。盗賊が村に入り、村人の生活がすさんでいくのに心を痛めた村人が、勧善懲悪の思想を普及させるために若衆に芝居を演じさせたのが始まりとされる。
寒さの厳しい毎年2月中旬に上演されることから「雪中芝居」とも呼ばれる。1997年には文化財保護法に基づく「記録作成などの措置を講ずべき国選択無形民俗文化財」に選ばれた。
今年の本狂言「菅原伝授手習鑑」は正月公演としては97年以来、16年ぶりの上演。平安時代の菅原道真(菅丞相)の失脚事件を中心とし周囲の人々を描いたもので、1746(延享3)年に大阪・竹本座で初演。いずれも見どころの多い「吉田社頭車引の場」を少年歌舞伎、「佐太村賀の祝いの場」「寺子屋の場」を妻堂連中が演じた。
少年歌舞伎はこれまで「白波五人男」を演じてきたが今回、さらなる可能性に期待しようと演目変更。本狂言の1幕を演じることになり、児童たちは昨年夏から練習を繰り返してきた。本番ではその成果を十分に披露。特に6年生が演じた「松王丸」「梅王丸」「櫻丸」「時平」が迫力満点で大見えを切ると観客席からは大きな拍手が送られた。
この日は「雪中」ではなく、「雨中芝居」となったものの、見物客たちは客席で弁当を広げ、酒を酌み交わしながら役者が口上を述べたり、見えを切るシーンでは拍手を送ったり、カメラのシャッターを盛んに切っていた。
2013年(平成25年) 2月17日(日)付紙面より
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東北公益文科大(町田睿学長)の「地域・大学協働人材育成プログラム」成果報告会が15日、酒田市の同学で開かれ、事例報告とパネルディスカッションを通して今後の就業体験(インターンシップ)の在り方や人材育成教育の課題などを考えた。
公益大では、地域の企業や団体の協力を得て学生の現場実習を指導し、社会から求められる技能の取得を目指す同プログラム(ワーキンググループ座長・上野隆一ウエノ社長)を実施。本年度は、社長の「かばん持ち」を通じて経営者の職業観や人生観を学ぶ「社長インターンシップ」を12人が体験したほか95人が企業で就業体験し、26人が医療・福祉機関で社会福祉士実習を行った。
この日の報告会には学生や企業などのインターンシップ受け入れ担当者ら約40人が参加。初めに学生4人が実習先での事例を発表した。
続いて、公益大理事で後援会長を務める上野氏を座長に「地域と大学との協働による人材教育のあり方」をテーマにパネル討議。就業体験した学生からは、「アルバイトと社会に出て働くことは全く違うものだと教えられた」「相手が誰であろうと、自信を持ってしっかりと話すことが大事と分かった」「焦ると自分本位になってしまうことを学んだ」「自分に足りないものが理解できた」などの感想が出た。
受け入れ側は「一人一人で目的意識が違った。とても前向きな学生もいれば『取りあえず単位になるから』という人もいた。どちらでもいいのだと思う。どんどん来てほしい」、社会福祉士実習の担当者は「もっと素直になってほしい。疑問が生じたら変な遠慮はしないで、すぐに聞く態度が必要」などと指摘。
同プログラムの担当教員からは「インターンシップを1年生の後期からスタートし最大4回、体験できるようにしたい。そうすれば、より現状に即したものになる」「今後もしっかりとしたテーマの下にプログラムを組んでいく」「皮膚感覚で得られるのがインターンシップの成果。これからは他の科目との連携をしっかり取って進めたい」などの考えを示した。
最後に上野氏が講評。「インターンシップの目的は、自分は何をしたいのか、そのためにはどうするかという『自分のカリキュラム』をつくること。企業側が道筋をつくってあげる場合が多いが、それがそもそも間違い」「就業体験先として庄内は、100人以上もの学生を受け入れる企業がある恵まれた地域」「社会人としての力を備えた学生をつくるという方向に大学全体で行くよう、理事会でも訴えていく」と話した。