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2017年(平成29年) 1月1日(日)付紙面より

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明けましておめでとうございます

「今西郷」の人づくり

荘内日報社社長
橋本 政之

 新年明けましておめでとうございます。日頃「荘内日報」をご愛読、ご利用いただき誠にありがとうございます。年のはじめに当たりあらためまして深く感謝を申し上げます。

 鶴岡市馬場町の鶴岡商工会議所会館の側に「敬天愛人 南洲書」の石碑が建つ。西郷隆盛(南洲、1828?77年)が自己修養の指針、基本思想とした言葉。旧庄内藩主酒井家が所蔵する真筆の書を写して刻し、鶴岡ロータリークラブが戊辰戦争から120年の戊辰の年、1988年にクラブ創立30周年記念で建てた。
 戊辰戦争から150年となる来年のNHK大河ドラマが西郷隆盛の生涯を描く「西郷(せご)どん」に決まったと昨秋、発表された。
 鶴岡市の月山山麓の庄内オープンセットでも撮影が行われた映画「殿、利息でござる!」の原作者で歴史学者の磯田道史氏(国際日本文化研究センター准教授)が昨年6月、東北公益文科大学後援会主催の講演会で庄内を訪れた際、酒田市飯森山の同大学に近い荘内南洲会の南洲会館や、西郷を祭る南洲神社を視察した。沖永良部島での流刑時に西郷が記した真筆の古文書などを読み、「西郷についての宿題が解けそうだ」と、初見の資料に驚いていた。
 南九州や沖縄の歴史に詳しい鹿児島県立図書館長の原口泉氏(鹿児島大学名誉教授、志學館大学教授)が昨年10月、公益大学関係者の案内で南洲会館などを視察し、同大学理事長の新田嘉一・平田牧場グループ会長と懇談した。薩摩出身で初代大阪商工会議所会頭の五代友厚が登場したNHK連続テレビ小説「あさが来た」の時代考証も担当した原口氏は、政治家や軍人のイメージが強い西郷を経済人としても注目する。
 懇談の後、原口氏は平牧グループの観光施設「相馬樓」(国登録文化財)、迎賓施設「寄暢亭」を見学。江戸時代から続く料亭を観光施設に衣替えした相馬樓が「酒田舞娘(まいこ)」の拠点として港町風情を継承していることや、明治中期に完成した寄暢亭の庭園が県外のマンション業者に渡りかけたところを買い取り保存した経緯を知り、初対面で受けた印象も重ねながら、「新田さんは『今西郷』のようだな」と例えた。
 「西郷先生と荘内先人達の魂の交わりの結晶」(酒井家第18代当主・酒井忠久氏)という、庄内藩士の手記をまとめた「南洲翁遺訓」の「第6章 人材の登用」に、「東湖先生」として登場する藤田東湖(1806?55年)は、西郷が「もっとも尊敬した2人」のうちの1人。水戸9代藩主・徳川斉昭の片腕として活躍した儒学者。もう1人は同じく東湖の教えを受けた同輩で福井藩士の橋本左内(1834?59年)。西郷が西南戦争で自刃したとき、懐には左内が生前に西郷に宛てた手紙があったという。
 安政の大獄で刑死する左内の生涯を描いた学習漫画が昨秋、福井藩校「明新館」の流れをくむ福井県立藤島高校の卒業生たちによって制作された。原作を担当した名古屋大学准教授、東山成江さんの夫は鶴岡市出身の植物学者、名古屋大学教授、東山哲也さん。哲也さんの実家に届いた一冊を拝借し一気に読んだ。
 同著にある獄中の左内の詩「誰カ知ル松柏凋(しぼ)ムニ後ルルノ心」は論語の「歳寒松柏」から。昨年秋に荘内松柏会(鶴岡市家中新町)が創立80周年で発刊した記念誌は「松柏歳寒心」。稲作を中心に農業技術を研究し地域への貢献を目指す松柏会の精神は「右手に論語、左手に鍬」だ。
 記念誌をめくり致道博物館初代館長、犬塚又太郎氏(1926?90年)が寄せた一文に目が留まった。「土地柄、家柄、国柄も一朝一夕で出来るのでなく、尊い汗と血と魂の積み重なった結晶」「どんな人柄を以って受けつぎ、どんな柄にして伝えるか」、自分の人柄は一人にとどまらず「縦にも横にもつながって行く大きい問題」と庄内の土地柄を一考している。
 旧庄内藩主酒井家は三河国より興り、初代の酒井忠次は徳川家康の重臣として活躍。3代忠勝のときに信濃国松代を経て庄内の地を治めた。5年後に入部から400年。この間住み続け、今も「殿はん」と敬慕される酒井家の家柄が庄内の人柄、土地柄の芯にある。
 公益大学の新田理事長は先月の理事会で、「この大学を地域に残すためには、日本の中でもピカッと光るものが欲しい。庄内の起爆剤、庄内が生き残るための大学にみんなで育て、庄内を幸せな地域にしたい」と語り、「選考は偏差値にこだわらない。学生の目を見て、眼光の鋭い子は必ずものになるし、目に輝きのある子を育てる」と強調した。庄内の土地柄が学風をつくり、学生の人柄をつくる。
 地球上にはさまざまなお国柄があるようだが、人柄の善し悪しは縦にも横にもつながる。今年も芯にある柄を見失わないように心掛けたい。
   
 「荘内日報」は、「庄内はひとつ」を創刊の理念に1946年、前身の「荘内自由新聞」の週刊発行に始まり、「時代をつなぎ、地域をつなぎ、心をつなぐ」を郷土紙の使命とする。本年も変わらぬご愛顧をお願い申し上げます。

荘内日報社社長 橋本政之
荘内日報社社長 橋本政之



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