2019年(平成31年) 4月21日(日)付紙面より
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鶴岡市の致道博物館(酒井忠久館長)で20日、「世界のYOSEGI 金子皓彦寄木細工コレクション」が始まった。日本輸出工芸研究会会長の金子皓彦さん(77)=神奈川県大和市=が、40年ほどかけて国内外各地に足を運んで収集した10万点余りの寄せ木細工コレクションのうち、東北初公開の約200点を紹介。幕末から明治時代にかけてヨーロッパなどからの受注生産で海を渡った逸品など、ジャポニズムの一翼を担った工芸品の数々が並んでいる。6月16日(日)まで。
金子さんは、國學院大文学部史学科を卒業後、同大考古学資料室学芸員、東京女学館短期大教授を歴任。考古学と博物館学が専門。大学の同級生だった角川春樹氏に映画会社設立の出資で協力し、その後に得た配当や役員手当などが寄せ木細工のみならず約20万点余りのさまざまな工芸品の収集原資となったという。
金子さんによると、古くは4000年ほど前のシリアに寄せ木細工の発祥があるという。その後各地へ広がり、国内へは奈良時代に「木画」としてシルクロードを通じて伝来。その後国内では、自然の木の色を生かすとともに、他国と比べてもバリエーション豊かな文様を特徴として発展。明治時代には西欧の日本趣味の流行もあり、西欧諸国からの注文を受けて箱根の木工職人が腕を振るった名品が絹や陶磁器などとともに輸出された。
今回の展示では、国内で作られた寄せ木細工としては最大級のライティングビューローをはじめ、装飾品として存在感を放つ飾り棚、チェステーブルなど、西欧の生活様式に華やかさを加えた家具や、箱根の寄せ木細工を代表する「秘密箱」まで大小さまざまに並ぶ。
展示開始前日の19日には、報道関係者などを招待した内覧会があり、金子さんが魅力を紹介。「国内にも残っていないような特に精巧な逸品が国外に輸出されている。こうした輸出工芸品を通して日本文化の再評価につながれば。多くの方に見ていただきたい」と話した。
展示期間中は、▽記念講演会(5月19日午後2時から)▽寄せ木細工職人の篠田英治さんによる実演とコースター作り体験のワークショップ(5月18、19の両日)▽金子さんのギャラリートーク(6月19日午後2時から)―もある。ワークショップは要申し込み。
問い合わせは致道博物館=電0235(22)1199=へ。
2019年(平成31年) 4月21日(日)付紙面より
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世界中で愛され続けているウサギ「ピーターラビット」の作者、ビアトリクス・ポターの生誕150周年を記念した巡回展「ピーターラビットの世界展」が20日、酒田市美術館(石川好館長)で始まり、初日から大勢のファンが訪れ、その愛らしい姿に見入った。
ポターは1866年、英国・ロンドン生まれ。幼少期から動物や植物のスケッチが好きで、1901年に「ピーターラビットのおはなし」を自費出版。翌02年には白黒の線描画だった挿絵に色を付けて出版、生涯で計24作の絵本を発表した。晩年はロンドンから自然豊かな湖水地方に移住し自然保護活動の先駆者、農場経営者としても活躍した。
今回は、大東文化大学ビアトリクス・ポター資料館所蔵のコレクションをはじめ、日本の伝統工芸品とのコラボレーション作品など計180点を紹介。キルト作家、斉藤謠子さんが制作したピーターラビットをモチーフにしたパッチワークキルト作品の数々、フェルトアート作家の中山みどりさんによる立体造形、写真家・辻丸純一さんが撮影した湖水地方のパネル、戦前に日本で出版された絵本などが館内に並ぶ。
同美術館学芸員の武内治子さんは「ポターの生涯をたどった展示品を通し、ピーターラビットが愛され続けている背景を探ってもらえたら」と話した。
展示は5月26日(日)まで。関連企画として4月21日(日)午後2時から東北公益文科大の遠山茂樹教授(英国中世史など)が「ピーターラビットで読み解く英国社会」と題し講演。5月4(土)、5(日)の両日はピーターラビットが来館し記念写真に応じる(先着順)。問い合わせなどは酒田市美術館=電0234(31)0095=へ。