2021年(令和3年) 11月7日(日)付紙面より
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各分野の卓越した技能者を表彰する本年度の厚生労働省制定「現代の名工」に、「食の都庄内」親善大使の一人で、日本料理人の土岐正富さん(70)=庄内町余目在住=が選ばれた。県内選出は1人。土岐さんは「庄内の食材は旬がはっきりしている。季節を感じながら調理をすることが料理人としての一番の勉強」と料理へのさらなる意欲を語った。
土岐さんは鶴岡市出身。酒田調理師専門学校を卒業後、酒田市の料亭・香梅咲で修業を積んだ。「五人兄弟の末っ子で家に残るのは考えていなかった。大黒様とか祭り事の料理がおいしかったのが、料理人になろうとした原点かな」と笑う。1981(昭和56)年にアークベルに入社し、ベルナール酒田、セレモニーホール鶴岡などの総料理長を歴任。98(平成10)年からは天真学園高校調理科に非常勤講師として勤務し、退職までの17年間で約600人の調理師を育てた。
2013(同25)年には県からの委嘱を受け「食の都庄内」親善大使に就任。15(同27)年には「山形日和。」観光キャンペーンの目玉の一つとして駅弁「庄内弁」を監修し、庄内の多彩な食材や調理法を全国に発信するなど活躍。現在は庄内町で地元食材を使ったレトルト食品を製造・開発するオフィスサポートホールディングス代表としても活動している。
試作中というモクズガニや庄内柿をメーンに旬の山菜をあしらった創作料理「北月山 立谷沢川の秋風ものがたり」を作りながら「清河八郎とお蓮をイメージした創作料理。歴史などいろいろなストーリーを膨らませながらメニューを考えていくのが楽しい。それをお客さんが喜んでくれるのが一番の幸せ」とこれまでを振り返る。
認定には「感謝の気持ちでいっぱい。われわれの仕事は生産者がいてこそで、多くの人の支えがあったおかげ。50年この道一筋でやってきたが、こんな賞を頂けるとは思っていなかったので責任も感じる」と。「今は新型コロナウイルスで痛手を受けているが、庄内は食の王国と言っても過言ではない。肉も魚も野菜もおいしいが水がとにかくおいしい。われわれ料理人が勉強していきながら、この地域のために何ができるか考えていかなくては。また、若い調理師が育っていくような努力も重ねていきたい」と思いを語った。
2021年(令和3年) 11月7日(日)付紙面より
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酒田市出身のシャンソン歌手、故岸洋子さん(1934―92年)の楽曲を歌い継いでいくことを目的に活動を展開している「岸洋子を歌いつぐ会」(櫻田常夫会長)が企画した音楽イベントが5日、市総合文化センターホールで開かれ、参加者全員で岸さんの「夜明けのうた」などを合唱した他、県内で活動する音楽集団「みゅーじ館」が歌声を披露した。
歌いつぐ会は、岸さんの没後25年という節目に合わせ2017年5月、元音楽教師の佐藤喜和子さん(新橋四丁目)が中心となって設立。市内の児童・生徒に岸さんの功績を紹介している他、岸さんの誕生日(5月23日)に合わせ「希望コンサート」と銘打ったイベント、命日(12月11日)前後には、市民らが声高らかに岸さんの楽曲を歌う「メモリアルうたごえ」をそれぞれ開催している。
コロナ禍のため昨年はいずれも中止。今年5月の希望コンサートも開催できなかったことから今回、両イベントを同時開催することにし、市民ら約270人が参加した。
この日は2部構成で行われ、第1部は「メモリアルうたごえ」。歌いつぐ会事務局長の佐藤さんのリード、市内でピアノ教室を主宰する菊池春さんの伴奏で、集まった市民らが「夜明けのうた」「希望」「恋心」など岸さんの楽曲、県民歌「最上川」、童謡「里の秋」「かあさんの歌」などで声をそろえた。曲間には佐藤さんが「皆さんの歌声は、岸さんが眠る札幌市まで届いている」と語り掛けた。
第2部は「希望コンサート」。羽陽学園短期大(天童市)の高橋寛教授ら県内在住の声楽家で組織する「みゅーじ館」が華やかな歌声を会場に響かせた。
岸さんの30回忌を受けて歌いつぐ会は今年5月、市美術館を会場に「岸洋子回顧展」を開催。佐藤さんは「市民、特に若い世代から岸さんの楽曲を広く知ってもらい、歌い継いでもらいたい」と話した。