2022年(令和4年) 4月8日(金)付紙面より
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庄内沿岸の海水温が上昇していることが県水産研究所(鶴岡市加茂)の調査で分かった。同研究所は「温暖化や『レジームシフト』などが要因として考えられる。冷水域を好む魚類の減少など、漁業への影響が懸念される」としている。
庄内沿岸でサワラやケンサキイカ、ハタ類といった西日本が主産地の魚の漁獲量が増加し、原因のひとつに海水温の上昇が指摘されている。
海水温調査は、毎月1回漁業試験調査船「最上丸」と漁業監視調査船「月峯」が精度の高い「CTD」という海洋観測装置を使って行っている。最上丸は酒田港沿岸から飛島にかけて、月峯は鼠ケ関港と加茂港の沿岸から沖合で定点観測(計14地点・海面表層0メートル―水深300メートル)している。同研究所は両調査船が観測した1981?2020年までの月別・水深別の水温を用いて、昨年更新された平年値(1991?2020年)と旧平年値(1981?2010年)を比較分析した。
その結果、沿岸水温は多くの月と水深で上昇した。特に水深50メートルの7月は0・54度、水深100メートルの2月は0・59度、水深200メートルの4月は0・57度高く、いずれも顕著だった。季節や水深に関わらず、全体的に海水温が上昇している傾向が見られた。
2019年と2020年の月別・水深別水温の評価では、19年の海水温は「はなはだ高い」が多く、20年は19年よりも増えた。対馬暖流の勢力が強い時期が多かったことに加えて、両年とも平均気温が著しく高かったことが海水温に影響したものとみられる。
県水産研究所海洋資源調査部の鈴木拓海研究員は「今回の分析結果は庄内沿岸で南方系の魚が多くなっている要因を具体的に示したデータといえる。海水温の上昇は魚類だけでなく海藻類などにも大きな影響をもたらす。今後も引き続き動向を注視していきたい」と話している。
【レジームシフト】10年から数十年単位で生じる地球規模の気候や海洋の状態遷移。