2022年(令和4年) 6月12日(日)付紙面より
ツイート
鶴岡市の松ケ岡開墾場近くにある「カスミ桜」(市指定天然記念物)の後継樹が11日、松ケ岡に里帰りした。森林総合研究所林木育種センター東北育種場(岩手県滝沢市)が2019年に接ぎ木を成功させて育てた。後継樹の育成を依頼した地縁団体・松ケ岡開墾場の堀誠理事長は「私たちにとって『カスミ桜』は貴重な木。親木と同じ遺伝子を持った2代目が芽吹いた。今後、200年、300年と松ケ岡の歴史を見守ってくれるよう大事にしたい」と語った。
松ケ岡開墾場南側のモモ畑にあるカスミ桜は例年4月に淡いピンク色の花を咲かせ、地区民を楽しませている。樹齢は400年と推定され、市町村合併前の1992年に羽黒町(現・鶴岡市)が町の天然記念物に指定した。
2009年12月に雪の重みで高さ約6メートルの幹が折れ、今はかつてのような姿はない。木そのものが弱ってきたことから管理する松ケ岡開墾場が11年に東北育種場に後継樹の育成を依頼した。
2代目は高さ約60センチに成長。3年もので今年4月7日に二十数輪の花を咲かせたという。この日は東北育種場の中村隆史場長や担当者ら3人が訪れ、堀理事長にカスミ桜の2代目を手渡した。
中村場長は「松ケ岡開墾150年と酒井家庄内入部400年の記念すべき年に引き渡すことができて良かった。ほっとしている。2代目として大切に育ててもらえれば」と話した。
里帰りした2代目は鉢に植えられた3本。時機を見て開墾場内の「松ケ岡本陣」の庭に植えて大きく育てる。
【森林総合研究所林木育種センター東北育種場】
育種センターは北海道、岩手、茨城、岡山、熊本の全国に5カ所ある。国の機関で、松くい虫に強いクロマツや花粉症を引き起こさないスギの研究開発に取り組んでいる。地域のシンボルとなっている天然記念物の巨樹や名木の後継樹の増殖も事業の一つ。これまで全国から320件(21年度まで)の依頼があり、このうち241件が育成に成功した。後継樹は挿し木や接ぎ木で増殖させる。今回は台木に穂木を合わせる接ぎ木で、1本のカスミ桜に育てた。親木と同じ遺伝子を持つ。これまで増殖を手掛けた樹種はスギ、ケヤキ、マツ、クリなどが多い。
2022年(令和4年) 6月12日(日)付紙面より
ツイート
酒田市の国指定史跡「山居倉庫」を中心とした中心市街地の活性化に向け、新井田川を挟み対岸に位置する市有地の酒田商業高跡地(上本町)に民間資金で商業・観光施設を整備する事業について市は10日、先月に開催した4事業者・体による公開プレゼンテーションの結果を公表した。優先交渉権者に総合建設業・丸高(同市下安町、高橋剛社長)が代表を務める地元企業を中心とした7社の事業体を選定した。次点は大和ハウス工業山形支店(山形市)。
跡地の利活用について市は昨年、民間のアイデアを生かし、市民や観光客が立ち寄って経済活性化につながるような施設にしていくため「酒田商業高校跡地活用基本構想」を策定。同11月から民間事業者を公募したところ、県内外各2者ずつ計4者が応募。先月31日に希望ホールで公開プレゼンテーションを行い、学識経験者や市幹部職員ら8人で組織する事業者選定委員会(委員長・吉村昇東北公益文科大学学事顧問)が審査した。
優先交渉権者に選定されたプランは、江戸時代に庄内藩が創建し明治以降は本間家が引き継いだ米蔵「いろは蔵」が建ち並んでいたことにちなみ、「いろは蔵パーク(仮称)プロジェクト」と命名。コンセプトとして「人的交流を基盤とする酒田の歴史や自力で課題解決に取り組む風土、酒田での生活を熟知した『酒田プライド』を持つ地元民が結束し、地域再生のためのチャレンジを支え、人とまちを活性化する」を掲げている。約2万平方メートルの敷地に蔵をイメージした建物を新設、スーパーマーケット、フードコート、山居倉庫から移転する物産館・産直施設機能などを整備するとともに、周囲には緑あふれる広場を配置する他、駐車場も多く確保。デジタル変革など先端技術の活用、市民を巻き込んだ地域密着イベントの開催なども盛り込んでいる。
選定委が発表した報告書によると、山居倉庫周辺エリアの変遷、歴史的背景などを踏まえた提案内容がハード・ソフト両面で高く評価されたという。吉村委員長は「優先交渉権者は市有地を活用する本事業の性質、山居倉庫周辺エリアの特性を踏まえ、事業の確実な実施、供用開始後の持続・安定的な運営に向け、誠心誠意取り組んでほしい」としている。今後、市と事業体は基本協定を締結、2024年度中のオープンを目指す。