2022年(令和4年) 9月1日(木)付紙面より
ツイート
地方からデジタルの実装を進めることで新たな変革の波を起こす「デジタル田園都市国家構想」の推進に向け、内閣官房が初めて企画した全国の地方自治体対抗による「夏のDigi田(デジデン)甲子園」で、本県代表としてエントリーした酒田市の取り組み「飛島スマートアイランドプロジェクト」が実装・市(指定都市など除く)部門で優勝した。30日に内閣官房が結果を公表したもので、丸山至市長は「これまでのデジタル化の取り組みが総合的に評価された。さらに取り組みを進めていく」と話している。
デジタル推進で新たな価値創造
地域一体の住みよい街づくりへ
Digi田甲子園は、同構想推進のため、デジタル技術活用で地域課題を解決し、住民の暮らしの利便性と豊かさの向上、地域の産業振興につながる取り組みやアイデアを内閣総理大臣が表彰するもの。実装・アイデアの両部門に全国から159件の応募があり、このうち酒田市が対象となる部門には43の提案があったという。
約180人が住む本県唯一の有人離島・酒田市飛島には年間約1万人の観光客が訪れる。しかし、島内に公共交通機関・タクシーがないため、飲食・土産品購入といった観光需要を逃している。また、交通網の脆弱(ぜいじゃく)さ、常駐する行政職員の少なさから高齢化が進む島民の買い物支援、災害時の避難も喫緊の課題となっていた。
同プロジェクトは、島民を対象に開催したワークショップを踏まえ、市が合同会社とびしま、とびしま未来協議会、NTT東日本山形支店、東北公益文科大学などと連携し展開。島内における交通・物流手段、サービスの充実に向け、まずは飛島―西浜海岸(遊佐町吹浦)間約30キロの海底に大容量・高速通信ができる光ファイバーケーブルを敷設。今年4月には市とびしまマリンプラザに日用品・土産品を扱う店舗を整備し、島内どこからでも店舗で扱う商品や飲食がスマートフォンで注文できる「スマートオーダーシステム『うみねこちゃん』」を構築、さらに小型電気自動車「e―モビリティ」を活用した配送サービスを開始した。
市によると、うみねこちゃんはサービスを今後継続しても営業黒字となる見込みで、3人の新規雇用を創出。サービスの有用性・拡張可能性を示すかのように開始後、商品や飲食メニューの充実を求める意見が多く寄せられたという。
一方、光ファイバーケーブル敷設により、医師が常駐しない飛島でも本土の医師による高精細な映像を活用した遠隔診療が可能になった。丸山市長は「このプロジェクトは飛島に住む若者が多くの関係者を巻き込み、できることから変えていこうというもの。市のデジタル変革が目指す価値観を具体化してくれた」と述べ、「優勝を機に、より多くの市民、事業者が地域課題解決に向けてデジタル技術を実装した新たな価値創造を行い、住みよい街が構築できたら」と続けた。表彰式は今後、都内で行われる。
2022年(令和4年) 9月1日(木)付紙面より
ツイート
生命をテーマに慶應義塾大の学生が庄内地方の精神文化などに触れる「庄内セミナー」が30日、鶴岡市覚岸寺の鶴岡メタボロームキャンパスで始まった。9月2日まで3泊4日の日程で朝日地域の即身仏拝観や床固め(座禅)体験、庄内論語素読などを通し、自然や文化などを多角的に学ぶ。
庄内の自然や文化、歴史を体感し幅広い学びにつなげ、自身の「生」を見つめ直してもらおうと同大教養研究センターが2008年度の「鶴岡セミナー」を前身に庄内地域で実施している。昨年、一昨年はコロナ禍で中止となったため3年ぶりの開催となった。
11回目の今回は同大の大学生や院生の男女12人が参加。初日の30日は鶴岡メタボロームキャンパスで同大先端生命科学研究所の冨田勝所長が講話した。冨田所長はVTRを使いながら先端研を含む鶴岡サイエンスパークで取り組まれている先鋭的なバイオ研究や、先端研発のバイオベンチャー各社について解説。「鶴岡サイエンスパークは首相官邸の広報紙で『田んぼの中から世界を変える』拠点として紹介され、さらに中学校の公民教科書にも掲載された」と説明した。
冨田所長の講話は人工知能や生物の本能など多彩なジャンルにわたり、参加した学生は「人工知能を持つロボットが学習を重ねた末に感情を持つことはあるのか」など盛んに質問していた。
庄内セミナーは31日に朝日地域の大日坊で即身仏拝観、9月1日に湯殿山神社やいでは文化記念館での山伏修験体験、2日に致道館での庄内論語素読などが予定されている。