2023年(令和5年) 2月3日(金)付紙面より
ツイート
鶴岡市黒川地区で受け継がれている「黒川能」(国指定重要無形民俗文化財)の最大の神事「王祇祭」が1、2の両日、地区の鎮守・春日神社などで行われ、神の依(よ)り代を下ろした上、下の当屋では500年以上の歴史を持つ黒川能が真夜中まで演じられた。新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの開催となり、市内外から訪れた来場者が、神事能の幽玄な世界観に浸った。
王祇祭は春日神社の旧正月の神事で、同神社から神の依り代「王祇様」を上、下両座の当屋に移し、それぞれ1日夕から2日未明まで能楽で供応する。今年の当屋頭人は上座が遠藤由一さん(80)=屋号・半右衛門、橋本、下座が平親通明さん(74)=屋号・三五郎、成沢=が務め、上座が黒川上区公民館、下座が黒川下区公民館で行われた。今年は両座とも演目数を減らし、時間を短縮した。
このうち上座では、1日午後6時ごろから演能が始まった。地区の幼年の男児が演じる「大地踏」を櫛引東小1年の遠藤陽真(はるま)君(6)が務め、儀式能「式三番」に続いて、能の「絵馬」「船弁慶」「猩々(しょうじょう)」、狂言の「末広」「節分」が翌日午前2時ごろまで繰り広げられた。
会場には当屋の親類や地区住民をはじめ、県外からも黒川能ファンが訪れ、一貫目ろうそくがともる中、連綿と受け継がれてきた神事能の世界を堪能した。地元の上野久一さん(74)は「王祇祭は黒川の誇り。3年ぶりに能を観ることができ、ありがたい。他からも人が訪れたようで、祭りができて本当に良かった」と、3年ぶりの王祭での黒川能の上演に感慨深そうに見入っていた。2日は春日神社で、上座の能「絵馬」、下座の能「高砂」、両座立ち会いの「大地踏」などが奉納上演された。