2023年(令和5年) 4月2日(日)付紙面より
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東映創立70周年を記念し製作された超大作「レジェンド&バタフライ」が、3月25日に再スタートを切った鶴岡市の鶴岡まちなかキネマの記念すべき第1回作品として上映された。オープニングセレモニーには監督の大友啓史さんが登場し、テープカットを行ったほか舞台あいさつとトークショーでファンと触れ合った。トークショーの前には単独取材にも応じ、撮影秘話や再生した「まちキネ」へのエール、今後の自身の活動などについて語った。
冒頭飾る重要な婚礼のスケール感を庄内の地で撮影
―「レジェンド&バタフライ」は鶴岡ロケ、しかもクランクイン(2021年10月)の場所だったが、その理由は?
大友監督 鶴岡のスタジオセディック庄内で撮影したが、以前「るろうに剣心」などでも撮影しており、現代物が少なく、戦国武将の壮大な婚礼の行列のスケール感を再現するのに最適な場所だった。冒頭を飾る重要なシーンを、勝手知ったる場所で撮影ができ、私自身はもちろん、(主演の)木村(拓哉)君も高揚感を隠せないようだった。
那古野(なごや)城の大門ややぐらのセットを組んだ。やぐらは登れるようになっていて、あえて登ってくれとは言わなかったが、木村君はそこに駆け上がって、16歳だった信長の若さを表現してくれた。そういう感度のいい役者と仕事をするのは楽しかった。
しかも、鶴岡は食べ物やお酒がおいしい。撮影には「アメとムチ」が必要だが、鶴岡での食事は十分に“飴”の役目を果たしていた。特にいも煮は好きで、みそ味もしょうゆ味もどちらも注文する。鶴岡の味が恋しくて、前日は最終便で来る予定を1便早めておいしいものを食べて飲んだ。
―木村さん、綾瀬はるかさんをキャスティングした理由は?
大友監督 これは既に決まっていて、東映サイドからは2人を主役に、時代劇でというオファーだった。「龍馬伝」で大河ドラマを変え、「るろうに剣心」でアクションを変えてきた。この作品で令和の新しい時代劇を作りたかった。そのために映画の生きのいい時代の時代劇も何本も見た。
信長といえば冷酷でカリスマ性があり、男から見て怖い存在としてキャラクター化されている。政略結婚で妻になった濃姫は優れた武将であった斎藤道山の娘。武術にも戦略にも優れていたと想像できる。姫が“うつけ”の信長をたきつけて天下統一の夢をかなえようとしたのではないか。これまでの信長像が男性目線だとしたら、この作品は女性目線で生身の血肉の通った信長像を描いた。30年という年月の流れを、衣装やメイクはもちろんだが、声や話し方、所作などで2人とも見事に演じ切った。
俳優・大森南朋はオンリーワンの存在いつかまたタッグを
―今年の大河ドラマで大森南朋さんが、旧庄内藩酒井家の初代・忠次公を演じている。大森さんといえば監督がNHKドラマ「ハゲタカ」で主役に抜擢するなど重要な役を演じてきたが、監督にとって大森さんはどんな役者か。
大友監督 代えのきかないオンリーワンの存在。ドラマ「ハゲタカ」では外資ファンドで企業買収をするエリート役。当時は外資系の会社はなじみが薄かったので、無名だった彼を起用した。「龍馬伝」の武市半平太もそうだったが、切腹シーンの鬼気迫る演技はすごみがあった。ただならぬ感情が出せる俳優だと思う。
最近は家政婦になったりしているが、彼なりに演技の幅を広げようとしているんだなと思う。時々、大河も「ふうん」という目で見ている(笑)。
実は彼とは親戚で、彼の奥さん(俳優の小野ゆり子)が、うちのかみさんのめいに当たる。彼はロックミュージシャンでもあるので反骨精神を持っている。いつかくせのある役で、また一緒に仕事がしたいねと話している。
一度なくしたから分かる大切さまちの映画館守って
―このまちキネは多くの方の支援があり、映画館として復活した。そのことについては。
大友監督 ここは映画仲間の間でも良い映画館だと評判だった。座席の間隔が大きくとってあり、木の香りがするぜいたくな造り。閉館したと聞いて残念に思っていたが、こうして再スタートの上映作品として呼んでもらえてとてもうれしい。一度なくしてみて大切さが分かる。ぜひ皆さんで盛り立ててほしいし、自分も、またここで上映してもらえるような作品を作りたい。
レジェバタ解説
「レジェンド&バタフライ」は、東映創立70周年を記念して、東映京都撮影所をはじめ京都の仁和寺や妙心寺、霊鑑寺などの名刹でも撮影を行った。南蛮船は、宮城県石巻市で解体される直前の「サン・ファン・バウティスタ」号で撮影した。国宝級のふすま絵や庭園はもちろん、CG技術を駆使した安土城などのセットも、何度も見返して堪能したい作品。終了日未定。
鑑賞券プレゼント
5月31日(水)まで有効の鶴岡まちなかキネマ「無料鑑賞券」を本紙読者10人にプレゼントします。特別興行や特別上映、料金均一上映など一部利用できない作品もありますのでご注意ください。鑑賞前に受付に提示してください。
希望者は「見たい作品」「これから上映してほしい作品」などを明記して〒997―0035、鶴岡市馬場町8―29、荘内日報編集局、まちキネプレゼント係へ。4月12日(水)の消印まで有効。