2023年(令和5年) 5月31日(水)付紙面より
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酒田北港で藻場を造成して二酸化炭素(CO2)を取り込む実証実験が始まった。国土交通省酒田港湾事務所による「ブルーインフラ実証実験」。石炭灰を原料とした基盤材(ブロック)を海中に敷設し、削減と併せて魚礁効果も探る。地球温暖化を止めるため温室効果ガス削減は避けて通れない。今後1年間の研究・調査で海藻の「アカモク」の胞子を基盤材に着床させ、成長と削減効果を探る。
森林がを吸収する「グリーンカーボン」に対し、海藻類が吸収するのが「ブルーカーボン」。を吸収した海藻類は、死滅した後もそのまま海底に蓄積され、海藻がを持続的に貯留することで、温暖化対策の効果が大きいとされている。海の森づくりといえる取り組みだ。
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酒田北港での「ブルーインフラ」実証実験は、「藻場・干潟など生物共生型港湾構造物」との意味がある。藻場造成だけでなく、藻類を着床・成長させるための石炭灰原料の基盤材を沈めることで、基盤材の間に隙間ができ、着床する藻類との相乗効果で小魚が育つ漁礁の役目も期待できる。環境改善だけでなく、漁業資源を増やすことにつながる。
酒田港では「酒田港脱炭素化推進協議会」が環境改善に取り組んでいる。官民挙げた取り組みは昨年10月「酒田港カーボンニュートラルポート(CNP)協議会」として設置した後、今年3月、港湾法の規定に基づく協議会として名称を変更した。活動の狙いは温室効果ガスの排出量削減と吸収作用の保全促進。港湾の効果的な利用の推進を図ることで、山形県の脱炭素社会の実現に貢献することが目的。
日本の沿岸は海水温上昇などの影響で、海藻の生息域の減少が問題になっている。庄内沿岸でも磯焼けによる白化現象が確認され、岩場の海藻類が減って貝類の成長への影響が心配されている。森林生態系を保護するのと同様、海洋生態系も保護から成長を促し、藻場を増殖させていかなければならない。
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国交省酒田港湾事務所は2015年から海藻を育てる実験をしている。地元企業の協力で石炭灰とコンクリートを混合した約2立方メートルのブロック計166個を砂浜と消波ブロック間の海中に敷設したところ、約4メートルに成長したアカモクが群生し、ハタハタの産卵などの効果が確認されている。
政府は50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする脱炭素社会への移行を目指している。酒田港は公益社団法人「日本港湾協会」が港湾・臨海部の活性化に寄与した港湾を顕彰する「ポート・オブ・ザ・イヤー2016」に選ばれている。港湾を多方面から活用している実績が認められたもので、今度のブルーインフラ実証実験が奏功し、全国のモデルになることに期待を寄せたい。