2023年(令和5年) 1月4日(水)付紙面より
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捜索開始から50時間「無念の思いだ」
2次災害の恐れ調査解除見通し立たず
鶴岡市西目で31日午前0時55分ごろ、集落の裏山で土砂崩れが発生し、住宅2棟を含む建物約10棟が巻き込まれて倒壊した。2階建ての民家で就寝中だった男女2人は救助されたが、隣の家に住んでいた80代男性と70代女性の夫婦の安否が分からなくなった。消防と警察、自衛隊など約200人が24時間態勢で捜索活動を続けた結果、2日朝、現場の土砂の中から男女2人の遺体が見つかった。県警は行方不明の夫婦とみて、DNA型鑑定で身元の特定を進めている。鶴岡市が31日午前に発令した現場周辺8世帯22人の避難指示は、3日正午現在、継続しており、解除の見通しは立っていない。
8世帯に避難指示10棟倒壊
鶴岡市などによると、男女2人の遺体が見つかったのは、夫婦の自宅南隣の民家があった場所。裏山から流出した土砂の深さ約3メートルのところから、2日午前7時前に女性を、同7時45分ごろに男性を、いずれも心肺停止状態で発見した。捜索開始から約50時間経過していた。2人の遺体は損傷が激しかったという。2人は鶴岡署に収容され、医師が死亡を確認した。死因は外傷性ショックだった。
警察や消防、災害派遣要請を受けた陸上自衛隊は発生後、昼夜を分かたず懸命の捜索活動を続けた。2日午前、現地で捜索状況を説明した皆川治鶴岡市長は報道陣に「人命救助に最善を尽くして、自衛隊、消防、警察の皆さんが徹底して対応してきたが、本当に無念の思いだ」と話した。
県警は3日以降、身元特定のために現場で遺留品の捜索を行う。
鶴岡市は2日夕、現場周辺の集落に対する避難指示や、付近の県道の通行規制を当面続ける方針を示した。2次災害の恐れなどを調べるためで、倒壊した現場の建物のがれきや土砂の撤去時期は未定。
土砂崩れは31日未明に発生。現場は国道7号に近い県道沿いにある小高い山の麓にある一帯。山の斜面から幅約100メートル、高さ約20―30メートルにわたり大量の土砂や樹木が崩れた。住民が暮らす民家2棟を含む約10棟の建物が倒壊。民家1棟からは31日午前3時半ごろ、2階建ての2階寝室で就寝中に被災した70代男性と60代女性が救出され、この2人は軽傷だった。
避難指示が出された世帯のうち、1人は指示前に福祉施設に入所しており、他は1次避難場所の金山公民館から親類宅や市内のホテルに2次避難した。
土砂崩れが発生した現場は、2009年に土砂災害警戒区域に指定されていた。国土地理院の航空写真では1960年代は山の斜面が木々で覆われていたが、70年代には山の斜面の一部が削られ、開発が行われた。地元の住民によると、以前はモーテルがあったといい、その後に建て売りで分譲されたという。
山形地方気象台によると、昨年12月の鶴岡市は雨や雪の日が多く、降水量は21―30日の10日間合計で平年の約2倍となる165・5ミリを記録。1―30日の降水量は500・5ミリと、12月としては過去最多となった。
ドキュメント
【12月31日】
午前0時57分 鶴岡市西目字斎藤の県道沿い集落で「家が 倒壊している」と通行人から110番通報
午前3時半頃 土砂崩れ現場から70代男性と60代女性を救助
午前6時 鶴岡市が1回目の災害対策本部会議開催
午前6時半 県の要請を受けた自衛隊の派遣が決定
午前6時43分 市が一帯の8世帯22人に避難指示を発令
午前7時40分 市に対する災害救助法適用が決定
午前8時46分 消防や警察が行方不明者の捜索を開始
午前10時37分頃 自衛隊が現地に到着
午後3時頃 吉村美栄子知事が現地視察
現場に投光器を点灯し、夜を徹して捜索活動
【1月1日】
雨や雪が降りしきる中、約200人による24時間態勢で捜索
活動が続く
【1月2日】
午前6時57分 現場から1人目を発見
午前7時43分 現場から2人目を発見
午後3時15分 鶴岡署で医師が2人の死亡を確認