2023年(令和5年) 11月18日(土)付紙面より
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鶴岡市のイタリアンレストラン、アル・ケッチァーノオーナーシェフの奥田政行さん(54)が第14回農林水産省料理人顕彰制度「料理マスターズ」の最高賞である「ゴールド賞」を受賞し、13日に東京都内で授与式が行われた。ゴールド保持者は東北でただ一人、イタリアンのジャンルでは全国で唯一。
この制度は、日本の食や食文化の素晴らしさや奥深さ、その魅力に誇りとこだわりを持ち続ける料理人を顕彰するもの。生産者や食品企業などと協働して地産地消や食文化の普及の取り組みに尽力した料理人を国が顕彰することで、さらなる取り組みの推進や料理人相互の研さんが図られ、日本の農林水産業と食品産業の発展につながるとしている。
奥田さんは鶴商学園高校(現・鶴岡東高校)を卒業後上京し、都内で腕を磨き、1994年に帰郷。ホテルレストランや農家レストランの料理長を務め、2000年に鶴岡市下山添にアル・ケッチァーノを開業。在来野菜など地元産のおいしい食材を使い、素材を生かした料理で人気店に。22年には同市遠賀原に新築移転した。東京時代から、庄内は食の宝庫で米や野菜、魚介類、畜産物などの種類が豊富でおいしいことに着目。在来作物については山形大農学部などと協力し、学術的価値を高めた。また。02年に山形県で起きた無登録農薬問題では、県産作物の信頼回復に奔走した。
04年には県が庄内の食材を全国に広める「食の都庄内」親善大使に任命されたほか、これまでに鶴岡市の農業発展奨励賞、市政功労賞などを受賞。20年には文化庁長官賞を受賞。農水省の料理マスターズには10年にブロンズ、15年にシルバーを受賞している。
授与式は13日に帝国ホテルで行われ、大阪府吹田市の日本料理店「柏屋 大阪 千里山」の松尾英明さんと共に「ゴールド賞」を受けた。シルバー賞は3人、ブロンズ賞は8人で、山形市のフランス料理店「レストラン パ・マル」の村山優輔さんもブロンズ賞受賞。
奥田さんは「プレゼンテーターが、農水省副大臣の鈴木憲和衆院議員(山形2区)だった。当時、無登録農薬問題で何度も語り合ったことが思い出され、感慨深かった。庄内に戻ってきた時から、周囲の人に、庄内は食で注目されると何度も言ってきた。今回の受賞は、庄内の恵みのおかげ。庄内の素晴らしい食材が自分の創作意欲に火を付けた。これからも庄内を良くするために努力していきたい」と喜びを語った。
2023年(令和5年) 11月18日(土)付紙面より
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24年度に耐震診断実施
けやき保全石畳撤去前倒し
本年度中の公有化が予定されている国指定史跡「山居倉庫」(酒田市山居町一丁目)に関する整備基本計画策定委員会(委員長・本中眞奈良文化財研究所長)の第2回会合が16日、市役所内で開かれた。計画の素案、ケヤキ並木の保全などについて意見を交わしたほか、事務局の市都市デザイン課が、「2024年度まで」としていた計画策定期間を「25年度まで」と1年延長する案を示して委員たちは了承。事務局によると、24年度に耐震診断を実施する方針という。
21年3月に国指定史跡となった山居倉庫は1893年、取引所法で定める付属倉庫として7棟を建設したのが起こり。土蔵と屋根の間に空気を通し換気を促す二重構造の屋根、強い西日や強風を避けるためのケヤキ並木など温度を一定に保つ工夫がされている。白いしっくい壁と黒い屋根瓦、1890年代に植栽されたケヤキ並木は酒田を代表する景観にもなっている。
史跡指定を受けて市は今年3月までに保存活用計画を策定。同計画に基づき整備基本計画をまとめるため、今年7月には有識者12人で構成する同委員会を立ち上げた。この日はリモートを含め委員10人とオブザーバーが出席。延長後のスケジュールについて、本年度中に整備基本構想を策定、24年度は耐震診断を実施するほか、個別事業の協議を行う。
25年度は会合を3回開き、パブリックコメントを募集した上で、整備基本計画をまとめる予定。
一方、樹勢の衰えが指摘されているケヤキ並木の保全に関し、保存活用計画では生育障害の一因とされる石畳を撤去する方針を掲げ、当初は整備基本計画で方法などまとめ、25年度以降に取り掛かる予定になっていた。緊急性や広範囲に及ぶことを考慮し24年度から施工を開始することにし、この日は衰えが特に顕著な1―3号棟西側の8本で先行実施、石畳を撤去し土壌改良を施した上で、伸びた根が建物基礎を浸食しないよう防根シートを敷設する案が示された。
2023年(令和5年) 11月18日(土)付紙面より
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今年で33回目を迎えた酒田市制定「前田福祉賞」の表彰式が14日、市地域福祉センターで行われ、地域住民らの運動機能の維持・向上、集いの場の創出に尽力している「健幸にしあらせ」(祢津正樹会長)、傾聴活動を通して悩みを抱える人たちに寄り添っている「山形傾聴塾」(畠山實代表)に対し、矢口明子市長が賞状などを手渡した。
前田福祉賞は、市特別名誉市民の故前田巌さん(1906―86年、前田製管創業者)の遺志に基づき、遺族から受けた寄付金で創設した前田社会福祉基金が原資。他の表彰機会にも恵まれない善行の個人・団体を発掘しようと89年にスタート。前年までに35個人・21団体が受賞している。
同市西荒瀬地区で行われていた▽夜の太極拳教室▽ロコモ教室▽ストレッチ教室―の3教室を統合し2017年に設立した「健幸にしあらせ」は、門戸を地区外にも広げ毎回、40人余が運動機能の維持・向上に努めている。また、住民主体で生活支援・地域支え合いを行う市の「介護予防・日常生活支援総合事業」のうち「通所型サービスB」にも取り組み、高齢者の介護予防・地域交流の促進に貢献している。
1997年発足の「山形傾聴塾」は「聴くことはそれだけで援助になる」という理念に基づき、一人でも多くの相談者から「話を聴いてもらって良かった」と思ってもらえるよう活動を展開し、「心のケア」に貢献。コロナ禍前までは同市在住会員らが市内介護施設などを定期訪問し、悩みを抱える人たちに寄り添ってきた。その傍ら、「傾聴ボランティア養成講座」を年数回開催し、裾野拡大を図っている。
表彰式では、矢口市長が両団体の功績を紹介した上で「長年にわたって献身的に福祉活動に携わっている市民が多くいる、ここ酒田を誇りに思う。これからも活動の継続を」とあいさつし、代表者に賞状、記念品を手渡した。祝辞で前田直之・前田製管社長は「皆さんの日々の活動が酒田を支えている。体に留意し活動を活発化させてほしい。酒田が安心して暮らせる街になることを祈念する」と述べた。
2023年(令和5年) 11月18日(土)付紙面より
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政治の世界は「一寸先は闇」と言われる。岸田文雄首相が年内の衆院解散・総選挙を見送り、もう少しの間“闇の中”にいなければならないということになる。春からの解散風が収まったのは、「経済対策など喫緊の政策課題を解決する」という岸田氏の決断による。それにしても岸田首相の政権運営が迷走し、内閣支持率も下がっている。
年明けの通常国会召集冒頭、3月下旬の予算成立後、9月の総裁選前などと、解散時期の憶測が流れている。衆院議員の任期は2025年10月まで。内外に大きな課題を抱えている時だけに、任期ぎりぎりまで職責を果たすべきだという声もある。解散の大義は何か、国民に何を問う選挙になるのだろうか。
物価高騰が収まらず、政府はガソリン代を補填(ほてん)する救済策に続いて、新たに課税世帯で1人4万円の減税、非課税世帯に7万円の給付を打ち出した。しかし給付は即効性があるものの、減税は来年になる。ただ「税収増分を還元する」という岸田氏の言葉と異なり、鈴木俊一財務大臣は「税収増は政策的経費や国債償還に既に充てられている」と語り、減税などの経済対策のため新たな借金に頼らねばならないあたりも、政権の評価不足になっている。
岸田氏率いる保守本流の宏池会は自民党内で所属議員が少なく派閥の基盤が弱い。人事では大所帯の派閥に気を遣わなければならない。そうした背景も不祥事を起こした政務三役3人の処分遅れにつながったとされる。閣僚任命時の“身体検査”が不十分だったことにもなる。
「任命責任は私にある」と、閣僚らの不祥事のたびに歴代首相が繰り返してきた。一方、政治家そのものの資質低下が不祥事を生んでいるのではないか。衆院の小選挙区制後、政治家は「家業化」してしまったと指摘する声がある。中選挙区時は同じ選挙区で同じ政党の候補者が競い合うことで互いに研さんし、資質は高まった。「適材適所」として任命した岸田氏の責任もあるが、議員側にも責任があると言える。
国民は収束の兆しが見えない物価高への不満がある。しかし物価高は海外情勢の影響も大きい。円安は岸田氏が首相になる前から尾を引いている問題だ。岸田氏の指導力が問われるが、政権運営と政策は首相単独で進めるものでなく、内閣が一致して盛り立てるものだ。政権内部から足を引っ張っては政策を遂行できない。それも内閣支持率の低下につながっている。
減税と給付で景気を刺激することで、物価高を助長するとの指摘もある。大企業の増収が見込まれても、賃上げなどの恩恵を受けられない層も出てくるのではないかとの見方もある。誰が首相になっても、一気に起死回生策は生み出せない現状にある。岸田氏が打ち出した政策を見極めなければならない。
2023年(令和5年) 11月18日(土)付紙面より
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地元・遊佐町産の食材をふんだんに活用し、遊佐高校(佐藤りか校長、生徒63人)の3年生9人が総菜パン2種を考案。16日昼、同町北目の手作りパン石窯工房「ブーランジェリーNAO」(野里常直美店長)で販売活動を展開し、町民らでにぎわった。
同校の選択授業で地域デザインを専攻した生徒たちが、同店とコラボレーションし初めて企画。考案したのは遊佐産メンマとパプリカ、ひき肉やレタスなどを切れ込みを入れた厚切り食パンに詰めた「野菜ギュッとーすと」、国産豚肉100%のソーセージにこだわりのチリソースをかけた「まるでタコス!パン」の2種類。生徒たちは夏休みから取り組み、同店の協力で改良を繰り返して完成させ、この日各20個を限定販売した。
9人は同店向かいのログハウスに特設ブースを設営。開店と同時に町民らが次々と訪れ、パンを買い求めていた。生徒たちは緊張しながらも笑顔で「いらっしゃいませ」「ぜひ味の感想をお聞かせください」と買い物客らに話し掛けていた。
野里常店長は「生徒から伝えられたイメージに寄り添って一緒に制作した。使いたい具材など、高校生ならではの斬新な発想もあった。この経験を将来に生かせるよう頑張って」と。「野菜ギュッとーすと」を考案した遠田苺華(まいか)さん(18)は「遊佐の名産を使って、高齢の人でもこぼさずに食べやすいパンを作りたいと思って考えた。食べた人に食材の良さが伝えられたらうれしい」と話した。