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2023年(令和5年) 11月23日(木)付紙面より

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変化球 お金に関する三つの話

 今月はお金の使い方について、考えさせられる話題が多い。保険会社のCMも「よーく考えよう、お金は大事だよ」と歌っている。

 まず来年開催予定の大阪・関西万博の建設費が、当初の計画から2倍近くに増え2350億円に達するという。遠い関西の話だと無関心では済まされない。費用は国と大阪府・市と経済界の3者が、3分の1ずつ負担する。国の負担とは税金の支出だから、国民の負担がまた増えるわけだ。

 そもそも今の時代に万博は必要か、との議論が最初からあった。インターネットで世界中がつながる時代に、旧態依然とした博覧会は時代遅れ。情報技術を活用した斬新な形式で、費用も抑えて開催できる方法があるのではないか。

 2番目の話題は、国立科学博物館のクラウドファンディングだ。標本の維持管理等の資金難のためネットで呼びかけたところ、目標額の1億円はたった1日で達成した。最終的には9億2000万円近くが集まった。

 これは「いい話」と思いがちだが、少し待ってほしい。国を代表する博物館の維持管理を、有志の寄付に頼るのは政治の無策ではないか。貴重な資料保全の資金は出さないが、一方では問題山積で世論の支持が得られない万博に、数百億の超過予算を簡単に認める。この判断は不可解だ。

 補足しておくが、「国立」博物館ではあるが正確には独立行政法人といい、国立大学などと同じ法人格だ。経営努力は各法人に任されている。だが国からの交付金が収入の大部分であることは変わらない。

 最後は野球の大谷翔平選手が、全国の小学校にグローブを贈る話だ。野暮とは思うが、いくらかかるのか気になる。グローブの単価を送料など諸経費込みで見積もり、少なくとも1万円としよう。全国約2万の小学校に3個ずつで計6万個、総額は6億円かそれ以上と推定できる。大谷選手だからこその金額だ。

 三題話のように並べると深く考えさせられる。生きたお金の使い方とは何か。人々の幸福感や満足度を高め、文化や生活向上に役立つもの、目先でなく長い目で社会に貢献するものでありたい。

 政治の本来の役割は、個人に代わり社会の資源を適切に配分することだ。だが現実は大勢の人たちの善意や、大谷選手のような篤志家が目立っているのは残念だ。

論説委員 小野 加州男



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