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2023年(令和5年) 12月6日(水)付紙面より

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太平洋戦争開戦の日に思うこと

 「Z世代」という言葉を耳にする。1990年代後半から2012年頃に生まれた年齢層を指すという。ちょうど思春期から青年期真っ盛りの年代に当たるが、80年前、20歳前後の前途有為な学生が「学徒出陣」で戦地に送り出された。戦争は資源の最大の無駄遣いと言われるが、人の命までも軽視した。

 1941年12月8日、日本はハワイ・真珠湾を奇襲して太平洋戦争を始め、そして敗戦。今、戦争があったことを知らないZ世代も増えている。終戦から何年を経ても「戦争を思いとどまる方法はなかったのか」と思う。戦争で日本は民間人も含めて約310万人、東南アジア諸国では2000万人余が犠牲になった。そして世界各地では今も「絶対悪」の戦争が起きている。

 43年10月、明治神宮外苑競技場で行われた「出陣学徒壮行会」の様子は、今も新聞やテレビで報道されることがある。招集された約2万5000人の学徒は学生服、学生帽、ゲートルを巻き、雨でぬかるんだグラウンドを行進。スタンドは6万人余という後輩、女子学生、家族らが埋め尽くした。ラジオは実況中継し、出陣する者と送る者が一体となって感動に包まれたなどと報じられた。戦時下の雰囲気がそうさせたが、しかし悲壮感が漂っていた。

 軍部は兵力不足を補うため、徴兵が免除されていた学生を駆り出した。戦局は既に敗戦が濃厚。学生の代表はあいさつで「生きて帰るつもりはない」との言葉を残して、戦地に散った。人の命をただ「物」同然としてしか見なかった軍部は、正常な判断力を失っていたのだろう。

 敗戦から日本は「平和」を得、戦争しないことを絶対条件としてきた。しかし世界ではロシアのウクライナ侵略、イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区の戦争で民間人も犠牲になっている。領土問題を巡って一触即発の国や地域もある。ウクライナ戦争では、2年足らずで双方合わせて30万人近い死者が出ている。そこにあるのは人命の軽視以外の何物でもない。

 敗戦が迫っているのに、軍部は偽の情報を発表して国民の戦意を鼓舞し、異を唱える者は非国民扱いされた。ロシアでは戦場に送られた兵士の母親らが、家族を帰せとの抗議行動を起こしているが、行動は「点」にとどまって「面」へと広がらない。独裁政権の締め付けがそうさせている。

 国会では憲法改正が焦点の一つ。一度改正されれば戦争を放棄し、戦力は保持しない平和憲法まで手が付けられるのではないかと野党は危惧する。自衛隊は軍隊ではないが世界屈指の軍備を持つ。自衛のための戦力は要るが、平和外交によって紛争が起きない世界を目指す努力を積む。その実現が先の大戦で「国のため」と戦って亡くなった戦死者に報いることではないだろうか。

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