2023年(令和5年) 12月1日(金)付紙面より
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来年4月に鶴岡北高校と統合し、庄内初の中高一貫校「致道館中学・高校」となる鶴岡南高校(遠田達浩校長)の閉校式が29日、鶴岡市の荘銀タクト鶴岡で行われた。在校生と教職員、保護者、同窓会、来賓など約800人が出席し、130年余り続く“叡智の殿堂”の閉校を惜しみつつ、新しい高校でも歴史と伝統を受け継ぐことを誓い合った。
式典では冒頭の式辞で遠田校長が「来春、中高一貫校として新たに出発する。鶴岡南高校としての歴史は閉じ、新たなページを加えることとなる。生徒の皆さんには改めて鶴南高の歴史と伝統に誇りを持ち、進化し続けようという気概を持ち、これからも努力を重ねていくことを期待する」と述べた。
続いて鶴翔同窓会の齋藤正志会長が「これまでの卒業生は延べ3万数千人。多岐にわたる分野で活躍しており、鶴岡南高校の最高の宝と思う。鶴岡南高校としての流れは途絶えることになるが、形が変わっても135年の歴史と伝統を受け継いでほしい」とあいさつした。
来賓あいさつの後、在校生を代表して生徒会長の齋藤遼平さん(17)=2年=が「鶴岡南高の名前がなくなることは残念でならないが、学びやは記憶の中に残り続ける。私たちは鶴岡南高校の最後の生徒を務めると同時に、致道館高校の最初の生徒になることに誇りを持ち、これからの学校生活を歩んでいく」と誓った。最後に出席者全員で学びやへの感謝を込めて校歌を歌い上げた。式典後は記念行事が行われ、鶴岡南高校の歴史を振り返るスライドが上映された。また、音楽部による合唱と吹奏楽部研究会の演奏が披露された。
鶴岡南高校は1888(明治21)年7月、荘内私立中学校として旧西田川郡中学に設置。1901年に県立荘内中学校となり、20年に県立鶴岡中学校と改称した。その後、鶴岡第一高校、鶴岡高校と2回の改称を経て、1952年に現在の校名となった。現校舎は85(昭和60)年に完成。近年は文部科学省から指定されるスーパーサイエンスハイスクール(SSH)として、生徒たちが探求型学習に取り組むとともに、地元の大学や研究機関と連携して課題研究を行っている。
2023年(令和5年) 12月1日(金)付紙面より
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鶴岡市内の若手料理人を対象とし、在来作物や郷土料理の再認識をテーマとした「次世代ガストロノミーコンペティション」の最終審査が28日行われ、「芋ごぼたもち」を使った料理で臨んだグランドエル・サンの佐藤渚さん(26)がグランプリに輝いた。
国内唯一のユネスコ食文化創造都市・鶴岡をアピールする人材発掘につなげようと、鶴岡食文化創造都市推進協議会(会長・皆川治鶴岡市長)が2019年度、21年度に行った「鶴岡No.1次世代料理人決定戦」に続いて開催。3回目の今回は、ユネスコ食文化創造都市認定から来年で10周年を迎えるのを前に、料理人の技術向上や創造性に加え、在来作物や郷土料理に視点を置き、食材の生産者や郷土料理を継承する人を指南役としてチームでの審査とした。
コンペティションには8チームが参加。1次、2次の審査を通過した5チームが最終審査に臨んだ。当日は同市遠賀原のアル・ケッチァーノアカデミーで、同店オーナーシェフの奥田政行さんや山形大学農学部の江頭宏昌教授、鶴岡市出身の料理研究家・荻原和歌さん、料理王国副編集長の奥紀栄さんら9人の審査員が調理・実食審査。夕方からは同市錦町のエスモールで市内の小学4―6年生10人が特別審査員となり、試食して一番おいしいと思う料理に投票した。
午後6時45分から東京第一ホテルで行われた表彰式にはファイナリストのほか、文化庁参事官付専門官の寺澤百花さんら来賓、料理人の同僚や家族、食文化に興味のある市民ら約100人が参加。グランプリを受賞した佐藤さん、準グランプリの齋藤翔太さん(40)=庄内ざっこ、審査員特別賞(3位)の水口拓哉さん(43)=すたんど割烹(かっぽう)みなぐち=に賞状とメダル、副賞が手渡された。
グランプリを受賞した佐藤さんは、同僚で郷土料理に詳しい佐藤八重さんを指南役に同市羽黒町松ケ岡地区に伝わる郷土料理「芋ごぼたもち」を使った「いもごぼたもち切り株見立て~荘内藩士開墾の歴史と庄内の景色を残して~」を出品。米とサトイモを炊いて一緒につぶしたものを、味付けした豚肉や庄内麩で巻いたものと、シルクジュレで絹産業の里、白じょうゆに漬けた卵黄で庄内の夕日を表現するなど、一皿に庄内の歴史と文化が落とし込まれていることが高く評価された。佐藤さんは「料理だけでなく、人への思いやりを教えてくれた上司が定年になるのに、食で恩返ししたいと参加を決めた。いろいろな人の助けや協力に感謝する」とし、特別審査員の小学生に向けて「年齢や経験、性別などは関係なく、思い続けていれば必ず報われる日が来るので、目標に向かい頑張ってほしい」と語りかけていた。
1―3位の料理人は、これから2年間、鶴岡「食のアンバサダー」に任命されるほか、グランプリの佐藤さんはユネスコ食文化創造都市の大分県臼杵市への研修旅行が贈られる。また、参加した全8チームに大会特別賞が贈られた。
一番おいしいのは… 小学生が特別審査員
3回目となった「次世代ガストロノミーコンペティション」では、初めて小学生が試食審査を行った。食に精通した大人だけでなく、どの世代にも受け入れられる味を選出しようというもので、市内の小学4―6年生から公募した。
審査は、料理の見本を展示した上で、料理を載せて番号を付けたレンゲから味わい、一番おいしいと思った番号を投票した。
大山小6年の伊藤泰良君は「どれも初めての味わいだった。自分の好みの味を選んだ」と話し、朝暘四小6年の瀬尾燕君は「歯応えのある食感の良いもの」を、同小4年の熊田唯七さんは「全ておいしかったが、子どもでも食べやすいもの」をそれぞれ選んだと話した。
2023年(令和5年) 12月1日(金)付紙面より
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サケの溯上(そじょう)が最盛期を迎えた遊佐町直世(すぐせ)の箕輪鮭漁業生産組合採捕場に28日、遊佐小3年2組の25人が訪れ、牛渡(うしわたり)川を上ってきたサケの水揚げを体験したり、人工ふ化のための採卵作業を見学した。
同川などの月光川水系は鮭の平年遡上数が10万匹を超え、本州ではトップクラスを誇る。しかし今季は不漁。同組合の佐藤仁組合長によると、これまでの溯上数は約6000匹で、平年の3分の1にとどまっている。ただここ数日はコンスタントに400~500匹が上がるようになり、ようやく活気付いてきたという。
同校3年生たちはこの日、海からの貴重な恵みであるサケの生態などを学ぶため総合の時間を活用して訪問。牛渡川に設置された「うらい」と呼ばれる鉄製の柵に閉じ込められたサケを、たも網を使って水揚げした。
採捕場が月光川河口から約1・5キロと近いため、体力をあまり消耗することなくさかのぼってきたサケは元気いっぱい。子どもたちは組合員らの助けを借り、やっとの思いで水揚げ。本間湊斗(みなと)さん(8)は「重くて大変だったけど、捕まえられてうれしかった」と話した。
続いて採卵作業を見学。捕獲したばかりの雌サケの腹を鋭利な刃物で割き、鮮やかなオレンジ色の宝石のようなイクラがどっとあふれ出ると、子どもたちは歓声を上げた。
佐藤組合長は質問に、ふ化した稚魚は北洋のベーリング海や遠くアラスカ湾まで回遊しながら成長し通常は4年後に帰ってくる、雌の腹には約3000粒の卵が入っているなどと答え、「最も多い日は3000匹も捕った。そういう時がまた来てほしい」と語った。
2023年(令和5年) 12月1日(金)付紙面より
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地域内で食料自給圏をつくり、農村活性化を目指す「庄内スマート・テロワール」の豊穣(ほうじょう)感謝祭が29日、鶴岡市のグランドエル・サンで開かれ、成果報告や地域産資源を活用した料理の試食会が行われた。
「スマート・テロワール」(ST)とは、食料の生産から加工、販売、消費までの全てを地域内で完結できる農村経済圏のこと。庄内地域での実現を目指し、山形大農学部(村山秀樹学部長)などでつくる「庄内スマート・テロワール構築協議会」、山形大学アグリフードシステム先端研究センターが研究活動を展開し、ビジネスモデルの構築を探っている。今回の感謝祭には生産者など関係者約100人が出席し、意見交換を行った。
第1部のシンポジウムでは「地域産飼料資源のサプライチェーン構築に向けた取り組み」をテーマに、同学部教授らが研究成果、県内における取組状況・課題などを講演形式で発表した。農業ジャーナリストの浅川芳裕さん(山口県)は、「ST構想を活用した農業戦略とは」と題し、山口市における飼料用トウモロコシ栽培の実践例を紹介。浅川さんは「現在の食ニーズに対し稲作は飽和傾向。小麦や飼料用穀物など畑作への転換・輪作のポテンシャルが高くなってきており、STの追い風となっている」と説明し、「新たな農畜産物生産は新しい食文化となり産業を振興させる。イベントなど集客プロモーションを通し、オール地域産という安心・安全な食を提供、周知することが地域のにぎわい創成につながる」と語った。
第2部の試食会では小麦粉、みそ、納豆、豚肉など“庄内スマテロ”産素材を使ったピザやパスタ、パン、食肉加工品が振る舞われた。中でも酒田ラーメン「花鳥風月」と限定コラボしたメイン料理「まるごと庄内スマテロ味噌ラーメン」は、ブース前に行列ができるなど好評を博していた。