2024年(令和6年) 1月7日(日)付紙面より
ツイート
辰(たつ)年を迎えた。十二支では「草木が茂り活力が旺盛になる」東南の方位に当たる。昨年、株価はバブル期に並ぶ高値に達した。しかし景気は一般まで及んでいない。非正規雇用やパート労働で収入が不安定な人は多く、年末、首都圏では炊き出しに並ぶ列ができた。
景気は上向いているというものの、一方は好景気、もう一方は生活に窮しているアンバランスな現状は、政治と経済の歯車がうまくかみ合っていないからではないか。「辰」の読み方を「断つ」や「立つ」に置き換えてみたい。国民がさまざまな困難を断ち切り、明日に向かって立ち上がるために、何よりも先に政治の信頼回復を図るべきだ。
4月、「県立致道館中学校・高等学校」が開校する。鶴岡南高と鶴岡北高の両県立高校を統合し、新たに県立中学校を併設する。長い歴史を刻み、有為な人材を送り出してきた二つの高校の歴史が閉じられることを惜しむ声もある。しかし、庄内藩校・致道館の名称と「自ら考え学ぶ」藩校の精神が新しい学校に受け継がれる意義は大きい。中高一貫教育の学校は県内で2校目だが、庄内の風土の中で大きく羽ばたく人材が育ってくれるはずだ。
8日は成人の日。総務省の人口推計では、2024年の新成人(18歳)は約106万人。23年比6万人減で過去最少になった。新成人が生まれた05年の、1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」の1・26も過去最低だったという。結婚する年齢が高くなり、男女とも一度も結婚しない「生涯未婚率」も増えている。政府も少子化対策を打ち出しているが、「なぜ結婚しないのか」の原因を突き止め、結婚できる環境整備こそ肝心だ。
厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表した50年の「地域別将来推計人口」で、庄内5市町の人口は16万517人。20年の26万3404人の約6割まで減る。将来的に「消滅」する恐れのある自治体が全国で1000を超すとの見方もある。地方都市ほど厳しい環境に置かれている。
そうした中、鶴岡商工会議所は「人口が減少しても消滅しない都市」を目指す、独自の市街地将来ビジョンを策定した。歴史的建造物の活用、建築物の高さを制限して景観を保つ、歩行者に優しい道路整備―など、官民一体での取り組みを市に提言した。民間からの提言は貴重であり、その意見を将来の持続可能な地方づくりに生かしたい。
高速道路整備で後れを取っている庄内である。00年9月、山形自動車道湯殿山―庄内あさひ間の開通で、庄内もようやく高速道の時代を迎えた。しかし庄内が待望する“本命”の日本海沿岸東北自動車道(日沿道)は、新潟と秋田両県境間はまだ開通していない。災害対策の面からも、一日も早い未開通区間開通を願いつつ、辰年のスタートを切りたい。